県勢初、世界選手権に挑む トランポリン・タンブリング 又吉健斗は目指すところは…


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又吉 健斗

 タンブリングの又吉健斗(具志川東中―静岡・磐田東高―静岡産業大1年、同大クラブ)が、沖縄県勢で初めて世界選手権(11月・東京)への出場を決めた。代表入り確実とされた昨年の選考会は大けがから出場をあきらめた。ようやくつかんだ舞台に胸を高鳴らせながら、日本人がいまだなしえていない「世界選手権のファイナル(8位以内)入り」を目指し、日々努力している。(喜屋武研伍)

 静岡・磐田東高3年だった昨年、選考会3日前の練習で右足首のじん帯を損傷した。これまでにない全治まで6カ月を要する大けがに「何をどうしたらいいか分からなくなった」。その日の夜、母・ゆきのさんへ初めて自分から電話を掛けた。

 ゆきのさんは「一生懸命生きている証拠。神様は超えられない試練は与えないよ」と語り掛けてくれた。気持ちはすっと楽になり、会場に行くことも嫌だった選考会へ出向き、仲間の活躍をその目に焼き付けた。

世界選手権でファイナル進出を狙う又吉健斗=27日、うるま市のケンケン体操教室(喜屋武研伍撮影)

 その1カ月後、痛みを我慢しながら全国高校総体の体操競技に強行出場した。小さい頃から続けてきた体操競技の集大成。高校卒業後はタンブリング1本に絞るつもりだったため「意地でも出る」と臨んだ。ゆかで決勝進出を果たすことができたことで「もう悔いはない」と前を向いた。

 苦しいリハビリを続け、完全復活して迎えたことしの選考会は、圧巻の演技を披露した。「(体の)線がきれい」と評される元々高かった演技点に加え、2回宙返りに3回ひねりを加える、又吉にしかできない大技もしっかりと決めて見せた。ノーミスの65・0点で派遣基準得点の63点を上回り、無事内定した。

 悲願の日本代表にも、「やっとか、という感じだった」と冷静だ。確実に選考に通るために難度を落としていただけに、内容には満足していなかった。

 大学進学時には体操とタンブリングの二刀流も考えたが「自分に自信が持てるタンブリングで、世界でメダルを取りたい」と一つに絞った。タンブリングを普及させ、将来は沖縄で指導者になることを目指している。「明るく元気に、見る人に魅力を感じてもらえる演技をしたい」と大舞台にも気後れしていない。