患者にとって療養所は「捨て場」 強制労働課せられ、強制堕胎も…元患者が教員に求めることは…


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体験を語る平良仁雄さん(右)を真剣なまなざしで見詰め、話を聞く教職員ら=8月23日、名護市済井出の沖縄愛楽園交流会館

 【名護】沖縄県名護市済井出の沖縄愛楽園は8月23日、愛楽園の歴史とハンセン病について学ぶ教職員向け講座を同園で開いた。参加した教職員ら約30人は講話やワークショップなどを通して理解を深めた。

 元入所者で同園のボランティアガイドを務める平良仁雄さん(80)が「療養所での暮らし」と題して講話した。「らい予防法が生んだ差別、悲劇を心で受け止めて子どもたちにぶつけてほしい」と訴えた。

 平良さんは当時の療養所について「強制労働が課せられ、患者が家や道を造り畑を耕した。重傷者は軽傷者が看護した。療養所ではなく『患者捨て場』だった」と指摘した。

ワークショップで意見を交わす教職員ら

 強制堕胎や断種が行われていたことにも触れ「らい予防法は病気ではなく患者を抹殺するための法律だった」と語った。自身の体を何度もたたき、身ぶり手ぶりを交えて「国賠訴訟、家族訴訟で勝訴した。だが心の傷は癒えていない。私たちの傷を癒やすのは形だけの謝罪、賠償ではなく皆さん一人一人の温かい心だ」と訴えた。

 国立ハンセン病資料館社会啓発課の儀同政一参与による講座もあった。儀同参与はハンセン病問題を学校で取り上げる意味について「無知、無関心は差別が育つ温床だ。ハンセン病問題を通し、人権の尊重や個人の尊重という概念を学んでほしい」と話した。その上で「元患者と家族の名誉と尊厳を、私たち社会が回復しないといけない」と語った。

 今帰仁村出身で今帰仁中学校の特別支援員を勤める前田大和さん(23)は「名前は知っていたが愛楽園に来たのは初めて。仁雄さんの気持ち、思いを子どもたちに伝えたい。心でぶつかっていかないといけないと感じた」と話した。