水源に生息する魚類から有機フッ素化合物PFOS 710倍 汚染源は泡消火剤の可能性 京大准教授ら比謝川を調査


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 本島中南部の水源として利用される比謝川流域に生息する魚類から2016年に検出された有機フッ素化合物PFOS(ピーホス)の値が、環境省が15年に国内17都道府県で調査した魚類の含有量中央値の約710倍に上っていたことが3日までに分かった。調査は京都大の田中周平准教授や国立研究開発法人土木研究所の鈴木裕識研究員らが行った。鈴木氏らがまとめた科研費成果報告書は、水質調査で検出された関連する化学物質から「比謝川の汚染源が泡消火剤である可能性が示唆された」としている。

 泡消火剤は米軍嘉手納基地で使われ、県などは比謝川のPFOS汚染は嘉手納基地である可能性が高いと指摘してきた。

 田中氏らの調査によると、比謝川流域で分析した魚類15資料のPFOS平均値は1グラム当たり64ナノグラムで、環境省15年調査の中央値である同0・09ナノグラムを大きく上回った。報告書は比謝川の河川魚類は「高度に汚染されている」と分析している。

 体内のPFOS値を分析したのはソードテール(49~102ナノグラム)、パールダニオ(43~111ナノグラム)、グッピー(35~48ナノグラム)、テラピア(22~100ナノグラム)の4種。

 調査では魚類からPFOSの前駆体(ある化学物質が生成する前段階の物質)である「N―EtFOSE」が1グラム当たり584ナノグラム検出された。泡消火剤から生成したという研究事例がある「6:2FTS」が同190ナノグラム、「8:2FTS」も同7・8ナノグラム検出されたことなどから、科研費報告書は「泡消火剤が汚染源の可能性であることが示唆された」としている。

 ただ、田中氏は「実際に汚染源をたどって細部まで由来を検証した調査結果ではない」とした上で、「泡消火剤以外の物質からPFOSが生成する可能性はある」と付け加えた。
 (島袋良太)

飲料水中の値が突出 米軍、立ち入り調査拒む

 京都大の田中周平准教授らが2016年に実施した調査で、比謝川流域に生息する魚類の体内から検出された有機フッ素化合物PFOS(ピーホス)値が全国中央値の約710倍に上っていた。汚染は米軍嘉手納基地で使われる泡消火剤が原因だと疑われてきたが、田中氏らの調査では泡消火剤から生成したという研究事例がある「6:2FTS」などが検出され、汚染源が泡消火剤である可能性が高まった。だが米軍は県による基地への立ち入り調査要請を拒んでおり、また日本政府に提供したとされる基地内の汚染調査結果も公表されていない。

 同じく田中氏らが16年に実施した水質調査では、比謝川に合流し、嘉手納基地の排水が流れる大工廻川でPFOS値が1リットル当たり412ナノグラム、同じ有機フッ素化合物でPFOSの代替物質として使われる「PFHxS」が同164ナノグラム検出された。16年に田中氏らが関西の淀川と安威川の40地点で実施した調査の中央値である同6・9ナノグラム(PFOS)、同1・6ナノグラム(PFHxS)を大きく上回った。

 PFOSは発がん性などのリスクが指摘される。魚類から高濃度のPFOSが検出された比謝川流域の水は、県内7市町村に給水する北谷浄水場の水源となっている。
 ただ、どれほどのPFOSを摂取すれば健康被害を招くかについて、国際機関の世界保健機関(WHO)などによる統一基準は存在していない。基準が存在しない中で、沖縄では健康リスクが指摘されるPFOSの飲料水中の値が突出して高い状況が続いている。

 米国は水道水中の濃度について米国環境保護庁がPFOSやPFOA(ピーホア)の合計値を1リットル当たり70ナノグラムと設定しているが、これより厳しい水準を独自に設定した州もある。日本では規制基準がないため、厚生労働省が「暫定目標値」の設定に向けた作業を進めている。
 (島袋良太)