スーパー「タウンプラザかねひで」を運営する金秀商事(西原町、知念三也社長)が6月に、資本金を1億円から3千万円に減資していたことが分かった。10月1日からの消費税率引き上げに併せて始まるキャッシュレス決済のポイント還元事業の実施店が「中小企業」に限られているため、減資によって実施店になることを狙った資本政策と見られる。
琉球新報の取材に同社の担当者は「競争環境が厳しくなる中で、将来を見据えて今回の還元事業だけでなく中小企業対象の優遇措置を受けられるように減資した」と回答した。
政府は増税で消費が落ち込むことを防ごうと、10月以降、中小店舗でキャッシュレス決済をした人に国費で5%分をポイントなどで還元する。「中小店舗」かどうかは中小企業基本法に準じて、スーパーなどの小売業だと「資本金5千万円以下または常時雇用の従業員が50人以下」となる。
県内小売業者は「5%は薄利多売の小売業ではかなりの差」と語り、消費増税後の顧客離れを食い止める効果や財務の観点から、ポイント還元の適用を受ける効果の大きさを指摘する。
既に「タウンプラザかねひで」は5%還元の実施店舗として経済産業省の登録リストに入っており、資本金を5千万円以下に減らしたことで中小企業の扱いを受けたようだ。
減資によって中小企業となる動きは小売業を中心に全国で広がっている。帝国データバンクによると、今年1~7月に減資した小売業は412社で、前年同期の252社に比べて1・6倍以上となっている。
資本金を減らして中小企業に“格下げ”することは企業の信用力に関わる面もあるが、県内の金融関係者は「還元によって客が増えて売り上げや利益が増加するなら(減資による)デメリットはそれほどないと思う」と指摘する。
利用客の恩恵となる一方で、本来なら制度の適用外の事業者が減資をしてまで中小企業の優遇措置を受けることには、国費の在り方や制度のゆがみを指摘する声もある。
県内の小売業者は「制度の公平性という意味では、企業の判断で左右できる資本金の額を基準とするのはどうなのかと思う。店舗数や売上高なども基準に入れるべきではないか」と疑問を呈した。
事業の事務局を担うキャッシュレス推進協議会は「本制度に乗っかるためだけの減資はやめてほしいと注意喚起している。しかし減資企業を一律で対象外にはできない」と話した。
<用語>キャッシュレス・消費者還元事業
消費者がクレジットカードなどキャッシュレス手段を利用して商品を購入すると、国の補助金で本体価格の5%(フランチャイズ店は2%)がポイントなどで還元される。国の補助は中小店に限り、10月から2020年6月までの限定措置。