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『琉球新報が挑んだファクトチェック フェイク監視』 「偽情報」報道、社会に提起

『琉球新報が挑んだファクトチェック フェイク監視』琉球新報社編集局 高文研・1728円

 ジャーナリズムの基本は事実報道だ。事実(ファクト)であることを確認(チェック)し、可能な限り早く正確に、できる限り分かりやすく伝えるのが記者の役割である。それからすると、いま琉球新報が取り組むファクトチェック報道は当たり前のことをしているにすぎないことになるが、従来は報道してこなかった〈偽情報〉を、「あえて報道する」点が新しい。

 一方で、ファクトチェックの対象にはマスメディアの報道も含まれるので、対象である新聞自身がチェックすることの自己矛盾を指摘する声もあるし、チェックした結果を誰が真正と判断するかという問題もある。さらにいえば、うそ判定されるとその対象者や媒体が批判により強く反発して、自己の主張により強固に執着する社会現象もみられ、ファクトチェックが社会の分断化を後押ししているのではないかとの悩みもつきまとう。

 それでも、本紙のチャレンジは非常に大きな意義を有し、紙面展開が社会に大きなインパクトを与えつつあることが本書を通じて分かる。とりわけ、選挙期間中に行ったことは日本の報道界特有の伝統的な中立公平報道に縛られ、有権者に対して十分な政治選択情報を提供していないのではないか、との強い批判がある選挙報道を突破する新たな試みとして注目を集めた。

 インターネット上に溢(あふ)れかえる情報はフラット性を有しその発信媒体の優劣に関係なく、受け手はつい面白いあるいは刺激のある情報に吸い寄せられ、情報の真偽と関係なく無責任に拡散する傾向が強い。そうした中で、いまだ日本社会では他媒体に比して圧倒的な取材力を有した新聞社が情報の真偽を見極め、あえて「うそ(フェイク)情報」であることを紙媒体上で固定化させる意味は大きい。

 それは、信頼性が揺らいでいるといわれる、あるいはネット社会の中で存在価値が低下しているといわれる、紙の新聞の新しい社会的使命ではなかろうか。だからこそ、いま日本のジャーナリズムの中で最も元気がいいメディアの一つである琉球新報のチャレンジに注目していきたい。

 (山田健太・専修大学教授=言論法)

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 琉球新報で2019年1月1日から同21日まで連載した「沖縄フェイクを追う~ネットに潜む闇」と18年9月の沖縄県知事選、19年2月の辺野古県民投票の紙面からファクトチェック関連記事を抜粋し再構成した。執筆者は14人。

 

琉球新報社編集局 編著
四六判 222頁

¥1,600(税抜き)