沖縄担当相に首相の側近 辺野古移設、沖縄振興… 再改造内閣の布陣から見る政府の沖縄政策とは


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 安倍晋三首相は11日の内閣改造で、米軍基地問題や振興を担う沖縄関係閣僚3氏を交代した。これまで2度の知事選や県民投票などで名護市辺野古の新基地建設に反対の民意が示されたが、政権は強硬姿勢を変えず、今回の改造でもその路線に影響を与える要素は見当たらない。一方、沖縄担当には首相側近が起用され、2022年度以降の次期沖縄振興計画に向けた議論に官邸がにらみを利かせる狙いも透ける。

 11日の内閣改造では菅義偉官房長官が引き続き沖縄基地負担軽減担当相を兼務することが決まった。菅氏は14年9月からこのポストを兼ねており、首相官邸が基地と振興の双方で沖縄政策を主導する状況が続く。安倍晋三首相は11日の会見で、決まり文句のように沖縄の基地負担軽減を「政権の最重要課題」だと述べた。

■“変人”から一転

 外相から横滑りとなる河野太郎防衛相は、外交に続いて国防の立場からも名護市辺野古の新基地建設に関わることになる。過去には自民党にいながら省庁の政策を鋭く批判し、「変人」「異端児」の異名を取った河野氏だが、閣僚としては一転して政府方針を推進する立場を取る。外相として辺野古移設は日米合意通り進めることを強調してきた。

 「彼ほど入閣前と後の言動がかけ離れている議員はいない」。ある防衛相経験者は河野氏をこう評しつつも「外相として日米関係を熟知しており、防衛省の路線がぶれることはない。辺野古も同じだ」と指摘した。

 外相に就任した茂木敏充氏には沖縄担当相のほか、自民党でも沖縄に携わるポストを経験してきた。出身派閥である竹下派にはこれまで沖縄選出の国会議員が多く所属し、茂木氏がその意見を党の政策に反映させたこともある。

 ただ、党選対委員長として14年の知事選で大敗を喫した苦い経験もあってか、政府与党の思惑通りにいかない沖縄に対し「非常に厳しい見方を持っている」(自民党関係者)との声もある。

 県幹部は新たな内閣の布陣について「期待はしていない。そもそもが首相がトランプ米大統領のちょうちん持ちでは、何も変わらない」と淡々と語った。

■強い保守色

 一方、内閣府が所管する沖縄振興は、21年度に期限が切れる現行計画の検証やそれに替わる構想を議論する時期に来ている。沖縄担当相に就いた衛藤晟一氏はそのかじ取り役を担う。

 衛藤氏は12年の第2次安倍政権発足後、今回の入閣が決まるまで約6年半にわたり首相補佐官を務めた。首相側近で保守色の強い議員として知られ、現上皇さまの退位に伴う新元号制定を巡っては、新天皇即位前の公表に反発する保守系団体の頼みを受け折衝に当たった。

 前任の宮腰光寛氏とは対照的に、自民党内で沖縄振興に関わってきた国会議員の間でも衛藤氏が沖縄に関する政策通だという印象は薄い。

 沖縄振興には基地問題を巡る対立が大きく影を落としている。そのことは、ここ数年で一括交付金を含む沖縄関係予算が減額傾向にあることが裏付けている。自民党国会議員の一人は、衛藤氏起用の背景について「官邸の政策決定のメカニズムや、沖縄の問題がどんな力学で動いているのかを分かっている。それを押しのけて衛藤氏が何かをやることない」と語った。
 (當山幸都、知念征尚、中村万里子)