控訴審判決でも、「第三者行為論」により差し止め請求を棄却とした一審判決が維持された。基地の管理・運営権は米国に委ねられており、日本は米軍機の運航などの規制や制限ができないことがその理由である。基地の管理・運営権も米軍機の規制権限も全否定する論理は主権国家にあるまじき考え方で、不当だ。
損害賠償額の基準額は一審判決より約3割も減額された。その根拠は明確とは言いがたく、合理性は見いだしにくい。
対米訴訟については一審同様、国際慣習法の存在を根拠に、米国が日本の裁判権から免除されるとした。原告らが主張するように、「国連国家免除条約」や外国の国内法および判例法からして、そのような国際慣習法が存在するとの法的確信は得られない。
国家の主権を排除する特別な取り扱いを、国際慣習法という不明確な根拠で認めてしまっている点は、早急に見直しが必要だ。
(高作正博氏、関西大教授 憲法学)