持続可能な世界を実現するため、貧困や教育、気候変動、海洋資源など17の目標を掲げ、世界的な取り組みが進む持続可能な開発目標(SDGs)。2018年に「サンゴの村宣言」をし、SDGs未来都市計画を立てて持続可能な地域づくりに取り組む恩納村は、ミツバチの動きで赤土流出を防ぐ「PROJECT Bee(プロジェクト・ビー)」を進めている。養蜂で農家の収入を増やし、その一部を手間もお金もかかる赤土対策に活用し、サンゴ礁保全につなげようという計画だ。
海に流れ込む赤土の8割は農地からといわれる。畑の対策は急務で、土を露出させないよう作物の根元に搾った後のサトウキビを敷いたり、畑の縁に草を植えて土の流出を防いだりといった対策を取っているが、実施のための補助事業には予算や回数の制限もある。
村赤土等流出防止対策地域協議会で赤土対策を担当する農業環境コーディネーター桐野龍さんは、地表を覆う草を見ながら「遊休耕作地に栽培の手間がかからない花を植えれば、高齢化した農家でも蜂蜜を取れる。利益の一部は赤土対策事業に還元できる」と着想を得た。赤土対策の草を畑の縁に植えることを条件に花の種を提供すればグリーンベルトも拡大できる。
まずはハチを育てる農家を増やそうと、18年度に村内の養蜂家を講師に農家対象の講座や試食会を開いた。蜜を搾り、商品化する事業者とも検討を重ね、ミツバチの試験飼育を続けている。19年度中には六つの巣箱から50キロを採蜜し、商品化するのが目標だ。
プロジェクトには地元の沖縄科学技術大学院大学(OIST)も加わる。ミツバチのコロニー(女王蜂を中心に構成する群体)を提供し、養蜂家に世話をしてもらって、ミツバチの大量死の原因となるダニの研究を進める計画だ。
ミツバチは果実などの授粉にも役立ち、ハチ自体の販売ニーズも高いという。「ミツバチは経済効果が高く、環境学習にも使える。蜜を取る体験や試食もできる」と桐野さんは事業の広がりを期待している。
(黒田華)