琉球交響楽団(琉響)の第36回定期演奏会が8日、浦添市てだこホール大ホールであった。バイオリニストの成田達輝を迎えて、県内では聴く機会の少ないベートーベンの「ヴァイオリン協奏曲 ニ長調作品61」を披露した。成田は名器であるストラディバリウスのバイオリンを使用し、硬軟織り交ぜながら琉響と共に情緒豊かな演奏を聴かせた。成田の奏でる起伏の激しい弦の調べが観客を圧倒した。指揮は大友直人、ゲストコンサートマスターは廣岡克隆(バイオリン)が務めた。
第1楽章は木管楽器の爽やかな音から始まり弦楽器が優しく包み込む。全体的にフォルテ(強い)の音で快活に演奏した。その後、成田のバイオリンが奥深い音色を鳴らす。カデンツァ(オーケストラを伴わないソリストの演奏)の場面では成田は弓を立てながら切れよく演奏し、ストラディバリウスのまろやかで上質な音色が会場に響き、観客をうっとりさせた。
第2楽章では琉響のメロディーが優しく流れた。中間部に入ると成田が繊細なビブラートを鳴らし、ゆったりとした心地よい演奏を聴かせた。
ロンド形式の第3楽章では成田の濁りのない純粋なバイオリンの音色が観客を引き込んだ。オーケストラが重なると、華やかさが引き出され、飽きない演奏を繰り広げた。クライマックスに差し掛かると成田の超絶技巧を駆使した疾走感あふれるカデンツァが披露され、最後は全体で豪快に演奏し、締めくくった。
演奏が終わると観客から拍手が鳴りやまなかった。成田はアンコール曲でフーバー「インタルシーミレ」を独奏した。激しい強弱と奇っ怪な音色はまるで音が生きているかのように感じた。
後半では琉響によるブラームス「交響曲第1番 ハ短調作品68」が披露された。心音のように鳴り響くティンパニの連打から始まり、哀愁漂う音色や明るい調べ、ホルンとフルートが語らうように交互に演奏するシーンなど、情熱的な演奏を繰り広げた。大友の指揮によって琉響全体の音がまとまり、秀麗な音色を響かせた。
今秋の定期も素晴らしい演奏を聴かせてくれた琉響。来年は琉響が結成されて20周年となる。来年に向けてより一層意欲的な演奏を期待したい。
(金城実倫)