60年ぶりに組踊「高平良」 沖永良部・畦布敬老会で若者熱演


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60年ぶりに上演された和泊町畦布の組踊「高平良(万才)」=15日、鹿児島県和泊町畦布の畦布字生活館

 【沖永良部で藤村謙吾】鹿児島県大島郡和泊(わどまり)町畦布(あぜふ)(沖永良部島)に残る組踊「高平良(たかてーら)(万才)」が15日、畦布の敬老会で約60年ぶりに上演された。「高平良」の由来は分かっていないが、1756年に尚(しょう)穆(ぼく)王の冊封の宴で上演された組踊「万歳敵討」(田里朝直作)が元とされる。組踊は畦布の中村スエさん(86)が中心となり復活させた。敬老会が開催された畦布字生活館には区民ら100人以上が集まり、人々に親しまれた芸能を地域の先輩の熱い指導の下でよみがえらせた若者たちに喝采を送った。 

 父を高平良御鎖に殺された兄弟があだ討ちを果たすという物語は「万歳敵討」と同じだが、一部の役名が異なる。万歳口説に乗せて棒を手に踊る区に伝わる芸能「棒万才」が踊られるほか、兄弟の供をする京太郎が登場するなどの特色が見られる。「高平良」の上演は、スエさんの父・中則さんが地謡を務めた1959年が最後。当時70歳だった中則さんが59年を最後に地謡を引退したことや、男性が本州へ出稼ぎに行き演じ手がいなくなったことから、上演が途絶えた。スエさんによると100年以上の歴史があるとみられるという。
 舞台を見守ったスエさんは「畦布の文化を一つも消してはいけない」と力を込めた。