〈重荷を負うて道を行く 翁長雄志の軌跡〉47 第8部 市長4期目 「差別看過できない段階」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
街頭でオスプレイ配備撤回を訴える翁長雄志ら=2013年1月27日、東京

 「琉球人は出ていけ」「中国のスパイ。オナガ、出て来い」

 米軍のオスプレイ配備に反対する沖縄の代表団が2013年1月27日、上京した。那覇市長の翁長雄志も加わった。要請に先立ち東京・銀座で行われたパレードで、雄志は「NO OSPREY」と書いた横断幕を先頭に、県議会や県内41市町村の代表らとともに行進した。その際、沿道の団体からヘイトスピーチが浴びせられた。口汚くののしる一部の人々の回りで、騒ぎにもデモにも関心を示さず、買い物をする人々もいた。

 要請団は28日、首相官邸を訪れてオスプレイの配備撤回と米軍普天間飛行場の県内移設断念を求める「建白書」(要請書)を首相の安倍晋三に手渡した。要請団は県議会がオスプレイ配備反対や、普天間飛行場の県外移設を求める決議を可決していることや、全市町村が要請に参加していることなどを伝え、基地問題の打開を求めた。首相から、オスプレイや普天間飛行場の県外移設について具体的な言及はなかった。

 建白書は、開発段階から事故を繰り返すオスプレイを配備することは「県民に対する『差別』以外の何ものでもない」と指摘。「国民主権、国家の在り方が問われている」と強調した。

 建白書に同意する全41市町村長と市長会、町村会、市議会議長会、町村議会議長会、県議会各会派、オスプレイ配備に反対する県民大会共同代表らが署名、押印した紙も添えた。

 雄志は上京から1カ月後の13年2月25日、東京行動を振り返り、特に沿道から投げられた「罵詈雑言(ばりぞうごん)」に関して市議会定例会で答弁している。

 「多くの国民が日本の安全保障について、沖縄だけの問題として負担を沖縄に押し付け、何事も起きていないかのように目と耳をふさぎ、思考停止状態に陥っている」「過重負担を訴えると『基地で食べているくせに沖縄はわがままだ』という論法になっていく。本土と沖縄の間にある認識の壁と差別は、看過できないところまできている」

 「大きな事件、事故が発生したら日米同盟、日米安保体制は吹き飛んでしまう。日米安保体制は偶然という砂上の楼閣に日々過ごしているといっても過言ではない」

 沖縄に対する日本国民の「認識の壁と差別」が見過ごせない段階に来ていると雄志が市議会で述べたことについて、妻の樹子は「ヘイトスピーチを浴びせた一部の団体より、騒ぎに見向きもせずに買い物をする人たちの姿に驚いたようだ。あれほど異常な行動が、日常の中にあることに衝撃を受け、嫌な予感がしたと言っていた」と語った。

 (敬称略)
 (宮城隆尋)