港湾管理者、米軍使用拒否できず 日米地位協定が壁に 民間港を使用する米軍の狙いとは…


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 在沖米海兵隊は19日、事前通告していた21日の本部港使用を取りやめた。17日の使用も市民や港湾労働者の抗議に阻まれ、本島で初となる可能性のあった米軍の本部港使用は実現しなかった。米海兵隊は本部港使用の理由として「伊江島補助飛行場での訓練」を挙げており、伊江島での訓練が強化される中、今後再び本部港の使用を通告するのは必至だ。

 日米地位協定上、港湾管理者には米軍の使用を拒否できる権限はなく、本部港使用を皮切りに今後、提供施設ではない場所について自由に活用しようとする米軍の思惑がにじむ。

 伊江島補助飛行場での訓練を巡っては、2016年に複数回、米陸軍の揚陸艇が村の自粛要請を無視して伊江港に入港している。18年12月には強襲揚陸艦の飛行甲板を模した着陸帯「LHDデッキ」が補助飛行場に完成した。ステルス戦闘機F35Bをはじめ、陸上・海上で訓練が繰り返されている。

 今回、米軍は本部港管理事務所に岸壁使用を事前通告したが、伊江村にはなかった。通告のない訓練が伊江村で常態化し、伊江島補助飛行場周辺の住民は騒音やフェンス外への落下物などの危険にさらされてきた。

 河野太郎防衛相は18日、今回の大型救助艇を導入によって、嘉手納基地周辺でのパラシュート降下訓練が回避され、伊江島での訓練が安定するとも受け止められる発言をした。17日本部港で米軍の船を確認した名嘉實村議は「強風の影響で、降下訓練は嘉手納基地で実施されることがある。大型救助艇を使えば予定通りに島で実施できるとの意図もあるだろうが、今回の規模の船では無理ではないか」と疑問を示した。

 本部港前で抗議した沖縄平和運動センターの山城博治議長は「今後民間の港を使う先鞭(せんべん)として印象付けたいのか。有事法制はできたが、『有事だけでなく普段から使う』と県民に示す行為だ」と危機感をあらわにした。

 10日の米軍から本部港管理事務所への通告後、県は11日と13日の2度にわたって米軍に自粛を要請した。17日も重ねて「県民が不安がり、港湾機能に支障をきたす恐れがある」と自粛を求めたが米軍は応じなかったが、結局、天候不良を理由に使用を見送った。

 米軍は過去にも07年に与那国町の祖納港、09年に石垣市の石垣港、10年に宮古島市の平良港を使用。今回は使用を見送ったものの、次回も県の自粛要請や住民の抗議を無視する格好で入港する可能性が高い。

 県幹部は「本部港を使うのは官邸など上の意向があるのではないか。概算要求や議会前にあえていろいろとアクションを起こし、県の動きを見ているのではないか」と国の動きをいぶかしんだ。(岩切美穂、吉田早希)