『ママは身長100cm』 「がんばらない」強さ


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『ママは身長100cm』伊是名夏子著 ディスカヴァー・トゥエンティワン・1512円

 表紙の吹き出しは、「だっこもできないママだけど」。

 「も」だなんて。読めば彼女の「なんでも」に驚くはずだ。彼女は1982年生まれのうちなーんちゅ。生まれつき骨の弱い障害(骨形成不全症)があり、身長100センチ、体重20キロの小さな身体で車いすを相棒に、神奈川で過ごしている。

 小・中学校と特別支援学校で過ごし、高校からは念願の普通高校へ進学した。憧れの女子高生ライフは、古くて階段のみの5階建て校舎が舞台だった。特別な配慮よりも、当たり前の絆が人を生き生きとさせていくのが分かる。そして、早稲田大学へ。香川大学大学院修了、アメリカとデンマークにも留学するなど、小さな段差どころか、単身海を渡っていく。

 2010年にパートナーと結婚。検診で聞いた「子宮のサイズは平均以上、妊娠・出産の可能性はある」。という言葉とエコー写真をお守りに、「障害者」でなく「一人の妊婦」として扱ってもらえたことが有り難かったと振り返っている。これまで幾度となく傷ついた経験もあるだろうと想像でき悲しくもあった。

 彼女の強さは「がんばらないためにがんばる」だ。彼女は現在2児を子育て中。そのため、家族をはじめ、ヘルパー10人というサポート体制のもと、食事や、お風呂、掃除に洗濯もヘルパーがする。それでもママは彼女。子どもたちにとって世界一大好きなママは一人。揺るがない。同じ子育てをする者として、救われる。時にパワフルなことはあっても、パーフェクトなどきっとないからだ。

 彼女は約10年コラムを書いてきた。初の著書は、分かりやすい言葉で、会話のよう。尽きない探究心も持ち合わせているのだから、表現は、活字であってもまぶしい。

 力が抜けて(大切)、力の湧く一冊だ。このようなことを書きながら、彼女と連絡を取り合うとシンガポールから帰ったばかりで、週末は高尾山キャンプで過ごすという。ひゃあ!私も、自分の人生を今すぐ楽しまなければなるまい。

 (伊藝梓・エフエム沖縄ディレクター兼アナウンサー)

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 いぜな・なつこ コラムニスト。1982年生まれ、那覇市出身。現在、神奈川県在住。骨の弱い障害「骨形成不全症」で電動車いすを使用。講演会のほか、ファッションショーや舞台でも活動。

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