「戦前の感覚抜けていない」 山田朗・明大教授 「拝謁記」で講演


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昭和天皇の「拝謁記」について「統治権の総覧者としての感覚は憲法が変わっても全く抜けていなかった」と指摘する山田朗明治大教授=25日、東京都の明治大学

 【東京】アジア記者クラブ9月定例会が25日、東京都の明治大学で開かれ、同大の山田朗教授(日本近現代史)が、田島道治初代宮内庁長官の昭和天皇との「拝謁(はいえつ)記」について講演した。米国による琉球諸島の軍事占領を昭和天皇が希望した「天皇メッセージ」との関連で「日本の軍隊を復活させないといけないと言い続け、沖縄を米国に渡すと言ったのは一時的な問題ではなく、昭和天皇のパワー・ポリティクス(武力政治)の基本的な考えだと思う」と指摘した。

 昭和天皇が第2次世界大戦について「反省」を表明しようとしていたことに関しては「戦争のやり方への悔恨であり、軍閥による『下克上』として自分も被害者との考え方だったのだろう」と分析。「日本の植民地支配は全くらち外で、『反省』というのもかなり限定的なものだと言えるのではないか」と語った。

 再軍備のための憲法改正や保守政党の団結など、政治的発言をたびたび表明したがる昭和天皇に対し、田島長官が抑制する役割を果たしていたと解説し「戦前の統治権の総覧者としての感覚は全く抜けていない」と指摘した。