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市民の声、直接国会へ 「発議」制度導入へ団体発足 多様な意見 示す機会を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 有権者の一定数の署名を集めれば、特定の法律の制定や改正、廃止などを審議するよう国会に求めることができる「イニシアチブ(国民発議)」制度の導入を目指す市民団体が4月に発足した。政府や国会議員だけでなく市民がこうした発案権を持つことで、より質の高い民主主義が実現できるという考えだ。
 市民団体は「INIT(国民発議プロジェクト)」(東京)。共同代表を務める水上貴央弁護士(47)は「選挙の争点は多様化しており、選挙だけで民主主義を実現するのは難しい。国民が個別の争点に対して意思表示できる機会が必要だ」と狙いを説明する。
 国民発議の具体例としては、2030年代までに原発を全廃させることを明記する法律や、選択的夫婦別姓を認める法律の制定を求めることなど、国民の多様な問題意識によりさまざまな提案が想定されている。
 国民発議と似た仕組みに、住民らが条例の制定や改廃を自治体の首長に直接請求できる地方自治法の規定がある。ただ、請求しても議会で否決されれば実現しない。
 市民団体の支援者で徳島県石井町に住む姫野英子さん(73)はかつて、吉野川可動堰(かどうぜき)の建設計画を巡り住民投票運動を展開。仲間と共に徳島市の有権者数のほぼ半数に当たる10万人超の署名を集め、1999年に当時の市長に計画の賛否を問う住民投票条例の制定を請求した。
 だが市議会は条例案を否決。姫野さんらは市議選で独自候補を当選させて議会構成を変えるなどし、再度の採決で可決にこぎ着けた。2000年に実施された住民投票では建設反対が9割を超え、建設計画は白紙となった。姫野さんは当初の条例案否決について「住民10万人にも及ぶ直接的な意見が反映されなかった」と振り返る。
 市民団体は国会議員に超党派の議員連盟の設立を働きかけており、来年の通常国会で国民発議制度を実現するための法案提出を目指す。徳島のような事例を念頭に、国民発議をしても国会で一方的に否決されることを避けるため、より多くの署名を集めれば国民投票を実施できる仕組みも合わせて盛り込む方針だ。議決前に投票結果を国民の意思として国に示せるようにする。