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闇バイト 対策決め手なく 広域強盗 ルフィら再逮捕 若者へネット啓発 鍵に 後悔 投稿削除も 捨て駒


闇バイト 対策決め手なく 広域強盗 ルフィら再逮捕 若者へネット啓発 鍵に 後悔 投稿削除も 捨て駒 ツイッター上にあふれる「闇バイト」の求人(画像の一部を加工しています)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 警視庁は12日、東京都狛江市で1月に起きた強盗殺人事件で指示役4人を再逮捕した。事件を機に注目を集めた広域強盗を巡っては、交流サイト(SNS)などで犯罪の実行役を募る「闇バイト」が社会問題となった。政府は警察庁を中心に対策を急ぐが決め手を欠き、若者らが手を染める例は後を絶たない。専門家はインターネット上での啓発が鍵だと強調する。 (27面に関連)
 「多大な迷惑をかけてしまった。被害者に苦痛を与えてしまい心苦しく思う。本当に申し訳ありませんでした」。7月の千葉地裁。1月に千葉県大網白里市であった事件の強盗致傷罪などに問われた男は謝罪の言葉を述べ、頭を下げた。
 男は陸上自衛隊久居駐屯地(津市)の元自衛官中桐海知受刑者(24)。アプリ「テレグラム」で「ミツハシ」を名乗る人物から指示を受け車を準備し、実行役らを送る運転役を務めた。事件翌日に逮捕され、7月に懲戒免職になった。
 闇バイトだったという。公判では「犯罪ぎりぎりのグレーなことをすると思った。少しためらいはあった」と吐露。「絶対やってはいけないこと。本当にばかなことをしたと思う」と後悔を口にした。判決は懲役3年。実刑だった。
 広域強盗事件を受け政府は3月、闇バイトなどの緊急対策プランを決定。青少年への啓発強化などを盛り込んだ。警察庁は「闇バイト」や「高収入」などとうたい犯罪の実行役の募集を示唆するネット上の投稿について、有害情報としてサイト管理者に削除を要請する対象に追加する方針だ。
 だが、闇バイトによる事件は相次いでいる。5月に白昼の銀座で高級腕時計専門店が仮面姿の男らに襲撃された事件で、実行役らのレンタカーを準備した男は「闇バイトに応募した」と供述した。若者だけでなく、借金を苦にした72歳の女が闇バイトで詐欺の「受け子」をし、現行犯逮捕される事件も起きた。
 東洋大の桐生正幸教授(犯罪心理学)は「安易に応募できることで犯罪を簡易化させてしまっている」と指摘。警視庁幹部は「短時間で多くの報酬を得られる『コスパ』の良さに目がくらみ、逮捕などのリスクを考えない若者が多いのだろう」と分析する。
 都合よく利用して、簡単に「捨て駒」として切り捨てられる―。警察庁は「犯罪実行者募集の実態」と題した冊子でこう注意を呼びかけている。摘発された少年の事例をまとめたもので、闇バイトの危険性を知ってもらおうとホームページでも公開。広域強盗事件でも、指示役から約束された報酬をもらえなかった実行役は少なくない。警視庁に1~5月に寄せられた闇バイトに関する相談は、昨年同期比で3倍に急増したという。
 広域強盗事件では、金品があるとの情報を得た指示役に動かされ、実行役が各地で犯罪を重ねた。桐生教授は「誰でも被害に遭う可能性を示した」と指摘。「闇バイトの入り口になるネット空間は現実に比べ規範意識が個人に任される部分が大きい。若者にしっかりと伝わるネット空間での啓発が重要だ」と語った。
ツイッター上にあふれる「闇バイト」の求人(画像の一部を加工しています)