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子どもたちの憧れ 原点に プリキュア放送20周年 女性の描き方に時代性


子どもたちの憧れ 原点に プリキュア放送20周年 女性の描き方に時代性 東映アニメーションミュージアムでのイベントで、キュアスカイの着ぐるみに見とれる樋口美生ちゃん(手前右)=6月、東京都練馬区
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

女の子たちが変身して悪と闘うテレビアニメ「プリキュア」シリーズの放送開始20周年を記念し、多彩な企画が進行している。15日には「映画プリキュアオールスターズF」が公開。時代を映す女性の描き方が話題になるが、制作側は「子どもたちが憧れる存在でありたいと思ってきた。そんな『原点』を再確認したい」としている。
東映アニメーションミュージアム(東京)でのイベント。色鮮やかなプリキュアたちのパネルの前に、放送中の20作目「ひろがるスカイ!プリキュア」の主人公キュアスカイの着ぐるみが登場した。「かっこいい…」とつぶやく樋口美生ちゃん(4)。見守る母さやかさん(29)は「できないことがあっても、主人公をお手本に頑張っている」。男性を頼らず、身を削るスカイたちに自身も共感する。
1作目「ふたりはプリキュア」は2004年2月にテレビ朝日系で始まった。未就学女児向けの放送枠に変身アクションを充てたのは「直感だった」と、初代プロデューサーで東映アニメーション執行役員の鷲尾天さん。安易に助けを借りず、努力を続けて味方を増やす主人公が、性別を問わず憧れを呼ぶと考えた。
中心スタッフの提案を受け、登場人物を男らしさ、女らしさの型にはめないよう気を配った。「日常で大人から『らしさ』を強いられている子どもを、せめて作品では解放してあげたかった」
インターネット上などで「女性活躍の時代を先取りした作品」との評価が目立ってきたのは5年ほど前から。男の子のプリキュアを主役級に据えた「ひろがる―」も、多様性尊重の風潮の反映として注目を集めた。
だが、そうした時代性は意図しておらず、ネット上の大人の声に縛られないよう気を付けていると鷲尾さん。「大事なのは、発信できない子どもたちがどう受け止めているか。必死で考えたい」
歴代のプリキュア78人が大冒険を繰り広げる映画では、理屈抜きの爽快感を重視した。「応援して、楽しかったと言ってもらいたい」という根本に立ち返った。
10月には、初期作の主人公の成人後を描く連続アニメがNHK・Eテレでスタート。11月にかけ、男子高校生が変身する初の舞台作品も東京、大阪で上演される。シリーズが長期化し、斬新な表現を生む難しさがある中で、新たな試みを通じて魅力を見つめ直したい思いが制作側にはある。
作品ごとにメッセージがあり、「ひろがる―」は誰かを守る大切さを伝える。夢中になる子どもにこそ、真っすぐ理想を語りたいと鷲尾さん。「今は難しくても、成長して理解してくれれば」。憧れの存在がいつか支えになるよう願っている。
(共同通信)