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学校の音環境 整備求める 不明瞭スピーカーで支障も 宇都宮大教授ら提言


学校の音環境 整備求める 不明瞭スピーカーで支障も 宇都宮大教授ら提言 小学校体育館での音響測定について説明する「リッツコーポレーション」の高橋昭社長=2022年10月、栃木県小山市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「体育館の音響のせいで気分不良を訴える児童がいる」。2019年12月、栃木県小山市のカーオーディオ専門店「リッツコーポレーション」の高橋昭社長(73)に、市内の小学校長からこんな相談が寄せられた。
 高橋社長が調べると、配線の不備で音が不明瞭になっていたことが分かった。ケーブルの接続を直すなどして聞こえづらさは改善した。他の学校でも同様の問題が起きていると知り、市教育委員会に報告すると、市立の全学校を対象とした調査が決まった。
 市教委の委託を受けた高橋社長は、長谷川教授らの協力を得て21年から調査に着手。各校に足を運び、体育館や校舎内でスピーカー音の測定を進めた。今年8月に市に報告した結果によると、小中学校と義務教育学校計35校のうち24校で、音の明瞭さを示す国際規格の数値が、推奨値を下回るなどの問題を確認した。
 同様の傾向は、別の調査でも明らかになっている。今年2月、学校向けの音響機器を取り扱う神戸市のメーカー「TOA」が、全国の高校生ら272人を対象にしたアンケートでは、55%が学校生活において「音で不便、不快に思ったことがある」と回答した。
 営業で各地の学校を訪ねてきたという同社宇都宮営業所の泉本和宏所長は「『聞こえにくい』との声は各地で耳にした」と明かす。
 長谷川教授や同僚の鶴田真理子助教らは、小山市教委の調査結果と、教育施設の音響に関する海外の事例を比較し、8月に提言を取りまとめた。多くの学校が1970年代に建てられ老朽化している点などが背景にあると指摘。早急に教員らへのアンケートを行って実態を調査し、問題が認められれば音響を測定したり、改善したりする必要があると主張する。
 長谷川教授は「音が悪くて授業に影響するなどの声が上がれば、行政は見過ごさずに実態を調べて改善につなげるべきだ」と語る。高橋社長は「スピーカーは音が出れば良いで済ましている例が多いと感じた」とし「聴覚の成長期である子どもたちのためにも、ピアノの調律師のように、定期的に音の状態を確認する存在が音響機器にも必要だ」と強調した。
栃木県小山市の浅野正富市長(左)に提言書を手渡す宇都宮大の長谷川光司教授=8月、小山市
 学校の教室や体育館、校庭に設置されたスピーカー音の改善などを求める提言を、宇都宮大の長谷川光司教授(感性情報学)らがまとめた。整備不良から音響機器に問題を抱える学校は一定数あるとみられ、子どもが体調不良を訴えた事例も判明したという。放置すれば学習に支障を来す恐れが生じるとして、行政に学校の音環境整備に取り組むよう要望している。

小学校体育館での音響測定について説明する「リッツコーポレーション」の高橋昭社長=2022年10月、栃木県小山市