「東京電力福島第1原発事故から12年。流れた時間は何だったのか。人々はどのような今を生きているのかを記録したかった。忘れられるスピードがあまりに速いので」と話す。
事故でさまざまな被害を受けた17人が自らの思いをつづった手紙を集めた書籍「福島からの手紙」を編集、出版した。
7人の孫に「自ら被ばくのリスクを学び、意識していくことが大切です」と書いた飯舘村の男性。学校で孫たちが受けた差別やいじめの経験を記した被災者。全てが実名で生々しく今を語る。
環境社会学が専門の立教大教授。新潟水俣病などの現場で、常に被害者目線でその実態や地域の分断などを調べ、政策提言も行ってきた。目と足が原発事故の被災地に向くのも当然だった。
「被害は周辺ほど切り捨てられやすい」と福島県外に逃れた「自主避難者」の聞き取り調査にも力を入れる。
事故の記憶は急速に忘れ去られ、原発再稼働が進む。政府が地球温暖化対策を理由に原発の活用へと政策転換したことに危機感を募らせる。
「その流れを見ていてこの本を急いで出さなければいけないと思いました。一方向に議論が流れ、立ち止まって考えることができない時に役に立つのは現場からの声なのです」
手紙を寄せた17人とは何度も直接会って語り合ったという。「若者を含めて多くの人に本を手に取ってもらい、ぜひ、手紙への返事を書いてほしい」と話す。北海道出身の57歳。
有料
<ひと>原発事故の被災者が今を語る 手紙を集めた本を編集、出版した 関せき 礼れい子こさん 立ち止まって考える機会
![<ひと>原発事故の被災者が今を語る 手紙を集めた本を編集、出版した 関せき 礼れい子こさん 立ち止まって考える機会](https://ryukyushimpo.jp/tachyon/2023/09/RS20230921G00599010100-scaled.jpg?resize=615%2C410&crop_strategy=smart)
この記事を書いた人
琉球新報朝刊
![Avatar photo](https://ryukyushimpo.jp/uploads/2023/09/favicon-21x21.png)