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寄付金「値上げ」ラッシュ ふるさと納税 来月経費厳格化 「駆け込み寄付」も


寄付金「値上げ」ラッシュ ふるさと納税 来月経費厳格化 「駆け込み寄付」も ふるさと納税経費見直しのイメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 「10/1値上げ」「10月から減量!!お早めに!!」―。ふるさと納税の仲介サイトに、こんな表示があふれている。総務省が10月から、経費の算定ルールを厳格化。多くの自治体が寄付金の引き上げや、返礼品の縮小に踏み切るためだ。利用者の間では寄付の駆け込みが相次ぎ、ルール変更を商機とみた仲介業者の競争激化も起きている。
 ふるさと納税制度で自治体は、受け取った寄付金のうち、返礼品や送料といった経費の合計額を50%以下に抑えなければならない。
 10月からは、これまで対象外だった経費も合算し、50%以下にする必要がある。
 具体的には、確定申告が不要となる「ワンストップ特例」の事務費や、寄付の受領証明書の発行費などが加わる。仲介サイトへの手数料は、システム管理費などの名目でも全額経費として扱う。
 これらを含めると、実質的な経費率が50%超の自治体があるためで、総務省幹部は「少なくとも寄付の半分は、地域活性化に使うのが原則。『脱法状態』にあり、これ以上は見過ごせない」と説明する。
 50%超となる自治体の対応は大きく分けて二つ。「寄付金の引き上げ」か「返礼品の縮小などによる経費圧縮」だ。仲介サイトには、これらの予告が相次いでおり、旧ルールが適用される9月中の「駆け込み寄付」が活発化。返礼品縮小前の寄付を促す自治体もある。
 寄付金の引き上げ幅はさまざまで、ホタテやリンゴなど約60種類の返礼品がある青森県は、3割アップの1万3千~3万9千円とする方針。送料や原材料価格の高騰も影響しているという。
 高松市は混乱を避けるため、金額が変わる返礼品の受け付けを9月末で停止。10月2日から新たな額を示して再開する。
 送料を抑えるため、イベントへの招待など「旅行・体験型」の返礼品に力を入れる自治体も多い。いずれのケースでも寄付側の自己負担額は原則2千円で変わりはない。
 仲介事業者も動いている。大手サイト「さとふる」は、自治体が返礼品の管理業務を同社に一括して委託すると、一部の手数料を割り引く新プランを導入。自治体に経費削減をアピールし、シェア拡大を狙う。
 山梨県富士吉田市は2022年度の寄付額が全国9位。以前からワンストップ特例の事務費なども含め経費を50%以下に抑えており、返礼品の変更は不要だ。
 ただ、ふるさと納税制度は毎年のようにルールが変わっており、そのたびに現場の混乱を招いているという。
 担当者は「規制目的は理解するが細か過ぎる。仲介手数料の制限など、自治体の収入増につながる対策にもっと力を入れてほしい」と要望した。