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性別変更 再び憲法判断へ 最高裁大法廷 手術要件巡り年内にも 4年前合憲、社会変化考慮


性別変更 再び憲法判断へ 最高裁大法廷 手術要件巡り年内にも 4年前合憲、社会変化考慮 性同一性障害特例法の手術要件巡る主張と司法判断
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 心と体の性が一致しない性同一性障害の人が戸籍上の性別を変更する場合、生殖能力をなくすことを要件としている特例法の規定が憲法に反するかどうかが争われた家事審判で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は27日、弁論を開いて申立人側の意見を聴いた。年内にも決定を出し、憲法判断を示す見通し。要件は2019年に最高裁が「現時点で合憲」と判断しており、その後の社会情勢などをどう考慮するかが焦点となる。
 申立人は戸籍が男性で、性自認が女性の西日本に住む50歳未満の社会人。大法廷は弁論前日の26日、全15人の裁判官が非公開で直接意見を聴く「審問」を実施した。最高裁によると、家事審判で審問を開くのは小法廷を含め初めて。公開の弁論に出廷すれば、プライバシーや日常生活に支障が出ることに配慮した。
 申立人は審問で「性別変更を認めてもらえると、私の人生は助かります」と訴えたという。27日に東京都内で記者会見した代理人の吉田昌史弁護士は「全ての裁判官が熱心に耳を傾けてくれたと感じた」と語った。
 04年に施行された性同一性障害特例法は、性別変更の要件の一つとして「生殖腺がないこと、または生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」を規定。事実上手術を要する内容の是非が議論になっている。
 大法廷の弁論では、申立人の代理人が「自身の性別の在り方が尊重されることは、憲法により全ての個人に保障される基本的人権だ」と指摘。特例法が性同一性障害者の人権回復のために制定された趣旨に照らし「(申立人が)自分の性別で安心して生きることができるような判断を心からお願いします」と求めた。
 申立人は性同一性障害の診断を受け、長年ホルモン療法を続けている。生殖能力をなくす手術を経ずに性別変更を求め、規定について「過大な身体的、経済的負担を課し、個人の尊重や法の下の平等を定めた憲法に反する」と主張している。家事審判では、手術を受けていないのを理由に家裁で20年5月、高裁段階でも同9月に申し立てを退けられていた。

 性同一性障害特例法 自認する性別が出生時と異なるトランスジェンダーの人などが戸籍上の性別を変更する要件を規定している。2人以上の医師から性同一性障害と診断された上で(1)18歳以上(2)婚姻していない(3)未成年の子がいない(4)生殖機能がない(5)変更後の性別の性器部分に似た外観がある―の要件を全て満たせば、家裁の審判を経て戸籍の性別変更が認められるとしている。