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パフォーマンス集団「態変」 障がい者表現追究し40年 「健常者の価値観を逆転」


パフォーマンス集団「態変」 障がい者表現追究し40年 「健常者の価値観を逆転」 旗揚げ40周年記念公演のプレ企画で「故郷 大いなる 旅」を披露した「態変」のパフォーマー=7月、大阪市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 大阪を拠点に障害者の身体表現を追究してきたパフォーマンス集団「態変(たいへん)」が今年、旗揚げから40周年を迎えた。主宰の金滿里さんは「健常者がつくってきた価値観を批判してきたのが態変。私たちは自分たちの身体で、その前提を逆転させようとしてきた」と語る。

 アフリカの伝統楽器バラフォンの生演奏とともに、スクリーンにナミビアの少女らの躍動感あふれるダンス映像が流れる。その前で全身をほぼ覆う色とりどりの「ユニタード」を着た態変のパフォーマーが体をくねらせ、床を転がった。

 40周年記念公演「私たちはアフリカからやってきた」(10月27~29日、大阪市・ABCホール)のプレ企画として、7月に同市内で披露されたのは「故郷 大いなる 旅」と題した作品。金さんは初の海外公演が1992年のケニアだったと回顧し「30年後に映像を通してでも(アフリカの人々と)セッションできたことはすごい。これまでやってきてよかったと思う瞬間を迎えられた」と満足げな表情を見せた。

 態変は83年、「障害そのものに最大限の表現力がある」との信念の下、金さんの提唱でさまざまな障害のある人々が集まって設立。大阪を拠点に年数回のペースで公演を重ね、差別や「優生思想」にパフォーマンスを通じてあらがい、海外でも高く評価されてきた。

 金さんは韓国古典芸能の名手だった在日1世の金紅珠さん(故人)の娘として大阪で生まれ、3歳の時にポリオにかかって全身まひに。10年に及ぶ障害者施設での生活を経て、先鋭的な障害者解放運動に参加した後、態変の活動を始めた。

 「私は障害者であり、在日コリアンでもある。そのことでメインストリームからはずっと異端視されてきたが、その分、普通の人には見えない世界のことが分かる」

 障害者が演者で、健常者が介護や裏方を務める舞台は旗揚げ当時、他に例を見ない革新的な在り方だったと金さん。「舞台表現でなら障害の強みを出せる。自分たちの身体で勝負ができると思った」と振り返る。

 態変のパフォーマーは車いすなどを使わず、ステージ上で転がり、体を絡め合う。その表現は、健常者の踊りや動きを前提としてきた観客の感覚を揺さぶる。

 「アフリカは人類発祥の地。だけどそこから枝分かれし、支配者と被支配者が現れた」。40周年記念公演のテーマをアフリカにしたのは、人々の命に優劣をつける価値観を批判してきた自分たちの活動の原点に立ち返るためだと、金さんは言葉に力を込めた。「アフリカ大陸は、西洋文化至上主義の中でずっと虐げられてきた。その根本にある『優生思想』をぶち壊したいと思っています」

(共同通信)