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ウクライナから届いた俳句を 句集にまとめた 黛まゆずみ まどかさん 戦禍 余白から想像して


ウクライナから届いた俳句を 句集にまとめた 黛まゆずみ まどかさん 戦禍 余白から想像して ウクライナの地下壕から届いた俳句を監修し、句集を出版した黛まどかさん
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 戦渦に巻き込まれたウクライナ人女性が地下壕(ごう)で詠んだ俳句を句集にまとめた。戦場で産声を上げたロシア語のHAIKUを日本語に訳し、五七五に整える作業は、文化の違いを超え、慎重に言葉を選んで紡ぐ難問の連続。「日本人の心に響くように」の一心だった。
 ウラジスラバ・シモノバさん(24)は14歳の頃に俳句を始め、空爆から身を守る暮らしの中でも詠み続けてきた。「俳句の人間として、手伝えることがあるのではないか」との思いでメールを送り、交流が始まった。
 出版に当たり、寄せられた700もの句を50に厳選した。独りよがりにならないように、ウクライナの俳人やロシアの比較文学者に声をかけた。
 初体験もあった。30年以上の俳句人生で一度も、季語のない句は作っていない。それでも無季のままにした句がある。
 真つ青な空がミサイル落としけり
 季語は俳句の命だ。葛藤はあった。「『夏空や』とすることもできた。でも無理やり入れることで、逆に句の命を失う」との考えに至った。廃虚となった都市の映像を見て絶句した記憶が根底にある。「こんなに色を失うのか。モノクロかと思った」。そして気付いた。「色とはすなわち命なのだ」と。だからこそ「季語を入れずに色を残したんですよ」。
 世界で最も短い文学だからこそ、読者が余白を想像するのが俳句だ。「日常に入り込んできた戦争がいかに残酷か。余白から想像してほしい。新たな経験をしますよ」。神奈川県出身の61歳。