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「上から目線」を記者突っ込まず ジャニーズ会見なぜ炎上 識者談話・竹中功氏 (謝罪マスター)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 1回目の記者会見は社名存続の表明が反発を招き、2回目は特定の記者らを指名しない「NGリスト」が発覚。一流の弁護士やコンサルタント会社が付いているのに、ジャニーズ事務所の会見は、なぜ炎上するのか。吉本興業で広報を長年担当し、現在は「謝罪マスター」として危機管理などのコンサルタントに携わる竹中功さんに聞いた。
 記者会見を見ていて気になったのは、上から目線だ。ジャニーズ事務所が、いかにマスコミと対等なコミュニケーションを取ってこなかったかが、あらわになった。タレント起用などで優位に立ち、数十年にわたるパワーゲームの中で、メディアは言うことを聞いてくれるもの、忖度(そんたく)してくれるものと捉えてきたのだろう。
 1回目の会見は全ての質問に答え、(関連会社社長の)井ノ原快彦さんが記者の名前を呼ぶなど、まだ話し合おうとする姿勢がうかがえた。
 だが2回目は、追及を受けるはずの事務所側が追及する記者をたしなめ、周囲の記者が拍手するなど、他の会見ではあり得ない展開だった。そもそも2時間と区切ったこと自体がおかしい。
 記者の指名NGリストは、外部委託のコンサルタント会社の責任としているが、会見は事務所と一体化しているもの。知っていたか、知らないかではなく、企業としてのガバナンスの問題だ。
 対する記者の質問力も弱い。突っ込みどころがたくさんある。手紙を井ノ原さんに託した藤島ジュリー景子前社長はなぜ会見に出てこないのか、と誰も聞かない。会見が2時間と設定されても誰も「えー!」と声を上げない。「スマイルアップ」という新社名は略したら「スマップやん」と誰もツッコまない(笑)。小学生でもできる質問だが、記者の脳裏に、これまでの事務所との関係がちらつくのではないか。
 質問が1人1問だったことも疑問だ。性加害問題を巡り、さまざまな人が怒っている。被害に遭った人はもちろん、裏切られたと感じるファンやスポンサー…。本来、会見は、誠実に答えることで、その人たちが抱える「怒り」を「理解」へと変えられる場のはずだ。
 事務所側は正直に伝えようとしているとは思うが、誰が何に対して怒っているのかを整理していないのではないか。それぞれの感情を解きほぐし、理解してもらえるような説明が必要だ。それには時間と手間がかかる。記者会見を何度でも開いて「週刊スマップ会見」という番組でもしたらどうでしょう。視聴率も取れると思いますけど…。
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 たけなか・いさお 1959年大阪市生まれ。著書に「謝罪力」など。