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樹木が奏でる楽曲いかが 坂本龍一さんら共同制作 山口の寺でイベント


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 樹木が発する微弱なエネルギー「生体電位」を音に変換して作った楽曲を聴けるイベントが、山口市の常栄寺雪舟庭で開かれている。楽曲は3月に亡くなった音楽家の坂本龍一さんと同市の山口情報芸術センター(YCAM)が共同制作した。11月5日まで。
 2011年の東日本大震災後、人類が生きる環境を支える樹木の存在に深い興味を抱いていた坂本さんが生体電位をもとにした楽曲作りを構想。かつて作品を共同制作したことがあったYCAMが、樹木の生体電位を計測できる機器を開発した。
 北海道や宮崎県など国内5カ所と米国、オーストラリアなどにある計24本の樹木に機器を取り付け、13年からデータ収集を開始。コンピューターを使い、生体電位の大きさに応じて高低を設定するなどして音を生成し、楽曲はそれらの音をランダムに組み合わせて生み出される。
 水墨画家・雪舟が造ったとされる雪舟庭を眺めることができる本堂の天井のスピーカーから流れる楽曲の電子音は、庭の木々のざわめきや鳥の鳴き声と重なって聞こえる。視覚や聴覚だけでなく、森林に包まれているような空間を全身で体験するインスタレーション作品だ。
 YCAMの西翼さんは「作品が生み出す音や雪舟庭の景色は一定ではなく、幅をもった揺らぎの中で成立している。作品と庭のその時々の組み合わせを楽しんでほしい」と話した。
天井のスピーカーから電子音が流れる常栄寺雪舟庭の本堂=9月、山口市