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芸術・芸能 過酷な実態 「やりがい搾取」撲滅訴え


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 2023年版の過労死等防止対策白書は、芸術や芸能の業界を重点分野とし、セクハラや長時間労働の問題を挙げた。フリーランスの働き手が多く、ある当事者は「自分たちが労働者だという意識が低い」と指摘。仕事への熱意を利用して過酷な働き方を強いる「やりがい搾取」の撲滅を訴える。
 白書では芸術や芸能の従事者延べ640人を調査。副業を含めた1週間の拘束・労働時間が60時間以上と回答したのは16・7%で、就業者全体の7・5%を上回った。1カ月の収入が10万円未満との回答は23・6%。特に「俳優・スタントマン」は33・9%に上った。
 ハラスメントに関する質問で、全体の6・6%が「仕事の関係者に必要以上に体を触られた」と回答。声優や俳優はいずれも10%を超えた。こうしたつらさとは裏腹に、幸福感は他業種よりも高い傾向が見られた。
 現代美術家の笠原恵実子さんは「契約書のない仕事が多く、報酬の基準が不明確だ」と指摘。長期間かけて制作したのに一方的にキャンセルされ、補償もなかった経験がある。
 「ハラスメントに慣れて当たり前と考え、次世代に継承されてしまう」と危惧。一人一人が「この労働環境はおかしい」と気付くような教育や啓発が必要だと語った。