母国、南アフリカにまん延するエイズウイルス(HIV)について留学先の岡山大で学んだ。故郷の村モシャテの友人と連絡を取り合い、性被害に遭った少女のカウンセリングやHIV検査、性教育に取り組むNPOを設立。この冬帰郷し、活動を本格化させる。
8歳の頃、母ティナがHIVに感染した。寝たきりで別人のようにやせ細ったが、母は強かった。治療の末に回復し、赤十字スタッフとして働き出すと、孤児や移民、性被害者のため物資の供給や心のケアに尽力した。
高校卒業後、その母が突然息を引き取った。悲しみに沈んだが、前を向くしかなかった。遺児らの留学を支援する「あしなが育英会」の奨学金に応募し、1年後の母の命日に合格通知が届いた。
岡山大で医療人類学を専攻。女性の人権も学ぶ中で、HIV感染者が世界で最も多い母国の現状や性暴力の深刻さを知った。そんな時、母がかつて支援したモシャテの女性から連絡が来た。「ティナがいなくなり、困っている人が多くいる」
遺志を継がなければと2021年、村の友人たちと「ティナ・オーガニゼーション」を設立。親族らにレイプされ妊娠した少女たちの存在や、被害を打ち明けられずに自らを責め、自傷に及ぶ実態が調査で見えてきた。
「女性が苦しみ、可能性が押しつぶされる社会を変えたい」。在学中も弁論大会や国際会議で声を上げてきた。卒業を機に故郷の地で現実を直視し、まずは少女たちを受け入れるシェルターの設立を目指す。25歳。
(共同通信)