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札幌五輪招致 山下会長に批判 34年も絶望 「同時決定ない」予想外れ


札幌五輪招致 山下会長に批判 34年も絶望 「同時決定ない」予想外れ 取材に応じるJOCの山下泰裕会長=14日、インド・ムンバイ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 札幌市が断念した2030年冬季五輪招致を巡り、日本側の誤算が波紋を広げている。「34年大会以降の可能性を探る」と表明したわずか2日後、国際オリンピック委員会(IOC)が30年と34年の開催地を同時決定する方針を固め、34年の可能性もほぼ消える事態に。日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長が「(同時決定の)可能性は低い」と明言していたことから「大失態だ」(政府関係者)と厳しい意見も出ている。

想定外

 13日夕、インドに降り立った山下氏は予想外の一報に戸惑った。「えっ」。山下氏が出席するIOC総会に先だって開かれていた理事会で、30年と34年の同時決定の方向性が固まった。11月末からの理事会で両大会の候補地が絞り込まれる見通しとなった。

 札幌市の秋元克広市長とともに記者会見し、34年以降への方針転換を表明したのが11日のことだった。34年大会は米ソルトレークシティーが有力視され、札幌は「かなり厳しい」(秋元氏)という情勢ではあった。それでも、2大会が一気に決まることはないとみて「34年以降」への先送りを掲げてしまった。

 ふたを開けてみれば想定外の展開に。山下氏は「読み違えたのは事実」と率直に認めるほかなく、秋元氏も「少し驚いている」と動揺を隠せなかった。

「札幌」なし

 15日の総会では「将来開催地委員会」からの報告で、30年はスウェーデンやスイス、フランスの3カ所、34年は米ソルトレークシティーが候補として紹介された。しかし「札幌」の名はスクリーンに映し出された資料にも、担当者の説明にも全く出てこなかった。

 関係者によれば、同時決定がないとの情報は山下氏がIOC側に直接確認したという。スポーツ庁幹部は「額面通りに受け取ってどうするのか。IOCがどういう伏魔殿か、東京大会で痛いほど知らされてきたはずなのに」と疑問視する。

 JOCの責任を問う声の一方で「札幌市側がふがいないからこうなった」(政府関係者)との指摘も。今回の理事会、総会の前に30年の断念を表明することはJOCもIOCも難色を示していたが、こだわったのは札幌市側。その表明もJOCの提案を受け入れるという体裁を取り、主体性に欠けることは否めない。

 札幌の立ち位置はこれまで以上に不明確になり、先送りという重い判断を下したことが完全に裏目に出た形だ。招致に関わる閣僚経験者は「もう一度(状況を)整理しないといけない」とため息をついた。

(共同通信)