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長時間TV 1~3歳発達影響/千葉大など研究/意思疎通や運動面など


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 テレビ・DVDの視聴時間と幼児の発達の関連を調べた調査で、視聴時間が長くなると1歳から2歳、2歳から3歳にかけ、いずれも発達の度合いが低くなる影響を認めたと、千葉大などの研究グループが24日までに明らかにした。カナダの先行研究では2~5歳に影響があるとの報告があったが、1歳でも影響があると分かったのは今回が初めてという。
 研究は環境省の「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータから約5万8千人を分析。視聴時間を1日当たり0~4時間以上の中で五つに分け▽コミュニケーション▽ジャンプなどの粗大運動▽物をつまむなどの微細運動▽親の指示などの理解▽スプーン使用や服の着脱など―の5領域の発達スコアを調べた。統計モデルを使い発達の早さなどの個人差は調整した。
 その結果、視聴時間が長いと、1歳から2歳ではコミュニケーションのスコアが低くなり、2歳から3歳では粗大運動や微細運動などが低くなった。一方、コミュニケーションのスコアが高い子は視聴時間が短いことも分かった。スコアを高める育児環境要因としては、年上のきょうだいや、本などの読み聞かせが挙げられた。
 千葉大予防医学センターの山本緑助教(小児環境疫学)は「家庭でのメディア視聴時間を考えるきっかけにしてほしい」と話す。今回の分析は2011~14年生まれの子が対象でスマートフォンの影響は検討しなかったため「今後調べたい」という。共同研究者で小児科医の目沢秀俊国立成育医療研究センター医師は「長時間視聴の背景には親の社会的孤立などがある可能性もあり、社会全体で解決策を考えることが必要だ」としている。
 研究結果は米医師会雑誌JAMA関連誌のオンライン版に掲載された。
 エコチル調査 環境省が2011年から全国で約10万組の親子を対象に実施している大規模疫学調査。胎児期から小児期にわたる子どもたちの成長・発達に影響を与える環境要因を明らかにする目的で始まった。血液や尿、毛髪といった試料を採取して調べるほか、追跡調査で病気と生活環境の関係などを分析する。