琉球新報朝刊 北朝鮮による原敕晁さん＝当時（４３）＝拉致事件で、実行犯として日本の警察が国際手配していた元朝鮮学校長で韓国籍の金吉旭（キムキルウク）容疑者が数年前に韓国で死亡したとの情報が、韓国側から寄せられていたことが２４日、捜査関係者への取材で分かった。生存していれば９５歳だった。首謀者とされる男は９４歳で北朝鮮にいるとみられるが詳しい消息は伝わってこない。真相解明が困難な情勢となった。
捜査関係者によると、死亡情報は韓国から１年ほど前に提供された。日本の警察当局が確認次第、警視庁が容疑者死亡のまま書類送検する方針。北朝鮮による拉致事件を巡り日本の警察当局はこれまで、両容疑者を含む１１人を国際手配しており、死亡が確認されれば初めてとなる。
金容疑者は１９８０年６月、首謀したとされる元北朝鮮工作員の辛光洙（シングアンス）容疑者らと共謀し、原さんを大阪市から宮崎県の青島海岸に誘い出し工作船で拉致した疑いがある。辛容疑者はその後、原さんに成り済ます「背乗り」と呼ばれる手口で、日韓でスパイ活動をしていたとされる。
警視庁公安部は２００６年、原さんに対する国外移送目的誘拐などの容疑で辛容疑者と金容疑者の逮捕状を取得。警察庁が国際刑事警察機構（ＩＣＰＯ）を通じて国際手配していた。
両容疑者は８５年、韓国潜伏中にスパイ容疑で逮捕され、韓国当局の取り調べに原さん拉致を認めたとされる。２０００年５月の釈放後は韓国国内で暮らしていた。
原敕晁さん拉致事件 １９８５年に韓国捜査当局が逮捕した元北朝鮮工作員辛光洙容疑者の供述から事件が発覚。辛容疑者は８０年６月、大阪市の中華料理店店員だった原敕晁さん＝失跡当時（４３）＝を宮崎県の海岸から北朝鮮へ拉致したと供述。原さんに成り済まして日本や韓国などでスパイ活動をしていた。北朝鮮側は、原さんが８４年に拉致被害者の田口八重子さんと結婚、８６年に肝硬変で死亡したと説明しているが、裏付け資料などは提供されていない。
金吉旭容疑者（警察庁のホームページから）
原敕晁さん
