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組織への女性リーダー増を国の目標義務化に 浜田敬子さん「ジェンダー平等」テーマに講演


組織への女性リーダー増を国の目標義務化に 浜田敬子さん「ジェンダー平等」テーマに講演 「日本がジェンダー後進国から抜け出すには」をテーマに講演したジャーナリストの浜田敬子さん=11月18日、那覇市西の県男女共同参画センターてぃるる
この記事を書いた人 Avatar photo 慶田城 七瀬

 沖縄県とおきなわ女性財団は11月18日、第5期てぃるる塾公開講座を那覇市の男女共同参画センターてぃるるで開催した。ジャーナリストで元AERA編集長の浜田敬子さんが「日本がジェンダー後進国から抜け出すには~小さな変化を沖縄から日本社会へ」をテーマに講演した。企業のジェンダーへの取り組みなどを取材し、近著「男性中心企業の終焉(しゅうえん)」にまとめた浜田さんは、政治や経済の分野における男女の格差解消に向けて、国として目標達成の義務化が大事と唱えた。

 浜田さんは新聞社の管理職で出産して、育児休業を取得し子育てと両立した経験がある。入社した1989年当時は記者に女性が少なく、警察などの取材先で記者と認識されなかったことや、会社にかかってきた電話で「女の記者なんかに話せない」と何度も言われたとし「少数派でいることが、とても居心地が悪かった」と明かした。

 近年、各分野で働く女性が増えたと実感しているが、23年に世界経済フォーラムが発表した国別の男女格差指数で、日本は146カ国中125位と後退している現状を紹介。順位を下げた背景として、健康や教育など4分野のうち、政治と経済の分野で格差が解消されず、欧州で企業の経営層の女性比率を30%にすることを義務化するなど取り組みが進む一方で、日本は努力目標になっており「国として目標達成を義務化するのが大事だ」と強調した。

 日本で女性の管理職や政治家が増えない背景には「男性は仕事、女性は家事」という性別役割分業観が根強く残っていると指摘。長時間労働や転勤が男性に偏りがちで育児に参加できず、女性が育児でワンオペになり「仕事も管理職もやって、家のこともやらないといけないのは『無理ゲー』だ」と話した。

 離職した女性が再び働き始めても非正規雇用が多く、正社員が増えないため賃金が上がらないことも問題という。そこにコロナ禍で観光業や飲食業で働く女性の失業が増えた。コロナ禍でシングルマザーの支援などにも取り組んだ浜田さんは「安定した雇用や賃金が女性の経済的な自立につながる」と話し、女性が正規雇用で働き続けることの重要性を強調した。

 賃金や雇用形態により男女の格差が埋まらない一方、少子化による人手不足を背景に、女性を労働力として活用しようという国の方針には「アクセルとブレーキを同時に踏むような、公共政策の矛盾が続いている」と指摘した。

 政治分野では、2021年の東京パラ五輪大会組織委員会の森喜朗会長(当時)による女性蔑視発言を背景に、女性の議員を増やす意識が高まった。議員の女性比率が3割を超えた都議会や杉並区長の岸本聡子氏ら各地で女性リーダーが増え、会議が早く終わるようになり、予算の優先順位が暮らし重視に変わった事例も紹介し「女性が一歩踏み出したことで組織が見直された。皆さんも自分の周りの組織の中で一つでも挑戦してほしい」とエールを送った。

 (慶田城七瀬)