〈ドクターのゆんたくひんたく〉161 直腸手術後の排便障害 時間経過、訓練で改善


〈ドクターのゆんたくひんたく〉161 直腸手術後の排便障害 時間経過、訓練で改善
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 朝、寝床から起きて朝食を食べて新聞に目を通してしばらくすると便意をもよおします。トイレで便座に座り、前屈みになり、いきんで排便を済ませます。

 腸管が健康なときは、われわれは毎朝のこの一連の行動を特に意識せずに行っています。

 快適な排便には、肛門周囲の神経と筋肉と、肛門から続く15センチ程度の長さの直腸がうまく連携して機能しています。起立すると反射によって結腸の運動が亢進(こうしん)します。食事を取って胃が伸展すると結腸が動き出し朝食後の便意が起こります。

 直腸にたまった便により直腸壁が引き伸ばされると肛門の筋肉が反射的に緩み排便の準備状態となります。トイレで座り上半身を前傾すると、肛門と直腸の角度が、排便しやすい緩やかな角度になります。それから私たちは横隔膜と腹筋に力を入れて収縮させ「いきむ」動作をして排便します。

 肛門に近い直腸の切除手術を行った場合、これらの連携に変化が起こります。便を貯留する直腸の働きがなくなり、神経に影響が現れて肛門を締めたり緩めたりする筋肉のバランスが崩れます。

 直腸を切除した後に肛門とつなぐ結腸は、便をためる容積が小さいため少量でも便意をもよおし何度もトイレに行きたくなります。神経障害の影響のため、肛門周囲の筋肉は緩みがちになり、我慢ができず便が漏れる場合があります。また、便意そのものが感じられず、気づかないうちに便漏れを起こすときもあります。

 ただし、手術後半年から2年程度経過すると神経機能が次第に回復し、肛門筋肉の収縮訓練を続けると、便回数の減少や便漏れの改善が見られます。また、これらの変化は肛門に非常に近い直腸を手術した場合の変化であり、肛門から離れた直腸や他の大腸の手術では、手術後の排便状態は術前とほとんど変わりがありません。

 病気や手術によって、普段の何気ない生活習慣が大きく変化します。手術後の排便障害について、その理由をよく理解し、時間経過によって軽快することや、肛門の筋肉の訓練によって改善することを認識しておきましょう。

(仲地厚、友愛医療センター 外科)


 「健康エッセー・ドクターのゆんたくひんたく」はこれまで第2・第4水曜掲載でしたが、今月から第5水曜を除き毎週掲載します。