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南西諸島の軍備強化進む 墜落事故、相次ぎ不安 <沖縄この1年2023>3


南西諸島の軍備強化進む 墜落事故、相次ぎ不安 <沖縄この1年2023>3 新石垣空港に着陸した陸上自衛隊のV22オスプレイ=10月19日
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 沖縄を含む南西諸島の軍備強化を狙う「南西シフト」。2023年は台湾有事を想定し、訓練や施設整備がさらに進んだ1年だった。沖縄では米軍に加え自衛隊による連携強化も進み、日米による基地負担が一層重くなっている。

 3月16日、石垣島に陸上自衛隊石垣駐屯地が開設。近年は南西諸島に基地新設が相次ぎ、部隊の「空白地域」を埋める駐屯地新設は一段落したことになる。政府は昨年末に安全保障関連3文書を改定。他国を攻撃する能力を持つ部隊が配備される可能性も高まる。

 国内初の実施となる「アイアン・フィスト」(2~3月)を皮切りに離島防衛作戦に関する日米共同訓練が繰り返され、連携を強めた。市民を巻き込んだ訓練も実施された。1月21日には那覇市で弾道ミサイルを想定した住民避難訓練が実施された。県庁でも3月17日、他国の武力攻撃から先島地方の住民らを九州へ避難させることを想定した国民保護図上訓練が初めて実施された。

 南西諸島防衛が強化される一方で重大事故も起こった。4月6日に宮古島沖で陸自ヘリコプターが消息を絶ち、南西防衛の一角を担う第8師団(熊本県)幹部ら搭乗10人が死亡した。

 11月29日には米空軍CV22オスプレイが鹿児島県屋久島沖に墜落、搭乗8人が死亡した。嘉手納基地へ移動する途中だった。直前には南西諸島でオスプレイの緊急着陸が相次いでいた。陸自もオスプレイを運用しており、10月の共同訓練では新石垣空港に初めて着陸した。日米両政府は今後もオスプレイ訓練をさらに拡大するとみられ、県民の不安を一層かき立てている。

 「南西シフト」に危機感を抱く市民団体などは11月23日、那覇市で県民平和大集会を開き、日米両政府による沖縄の軍事化に反対の意思を示した。県も紛争回避へ地域外交に取り組むが、市民レベルでも対話による平和の構築を求める動きが広がりを見せている。

 (小波津智也)