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嚥下障害、食事工夫学ぶ 中部保健所で講演会 食べて実感 「刻む」「とろみ」逆効果も


嚥下障害、食事工夫学ぶ 中部保健所で講演会 食べて実感 「刻む」「とろみ」逆効果も (右)食形態を工夫する方法などを紹介する管理栄養士の佐久川碧さん(左)摂食嚥下障害について説明するComer代表の大城清貴さん=1月、沖縄市の中部保健所
この記事を書いた人 Avatar photo 吉田 早希

 脳卒中や神経難病などが原因で、食べ物を口から食べることが難しくなる「摂食嚥下(えんげ)障害」。中部保健所が主催する難病医療相談会・医療講演会「家庭で出来る食事の工夫について」がこのほど同所で開かれ、受講した難病患者や家族らが熱心に耳を傾けた。講演会では、摂食・嚥下障害看護認定看護師の大城清貴さんが、摂食嚥下障害や食べやすい食事の特徴などについて解説した。管理栄養士の佐久川碧さんの講演もあり、参加者がとろみ付けを体験できる時間を設けるなど、食形態の工夫方法を詳しく説明した。大城さんによる個別相談会も開かれた。

食事の知識、誤解も

 1月18日の講演会で大城さんは、食べることが難しくなると栄養不足や免疫力の低下などにつながると説明。摂食嚥下障害の主な原因に、脳卒中や神経難病、認知症などを挙げた。食事を認識して咀嚼(そしゃく)し、舌で食べ物を喉の奥に移動させ飲み込むことで、食べ物が食道を通過するという「口から食べること」の一連の流れを、イラストや動画で解説した。

 一方、誤解されている「食べやすい食事」の知識に(1)食事を「刻む」と食べやすい(2)むせる場合「とろみ」を強くするといい―の2点を挙げた。食事を刻んでも食べにくい場合もあり、濃いとろみはべたつきが強く、口や喉に張り付いてしまう恐れもある。食べやすい食事は(1)べたべたしていない(2)バラバラになりにくい(3)柔らかい―の3点の特徴があるとして、全てそろった食べ物の例としてゼリーを紹介した。

ゼリーで食べやすく

 参加者は、細かくつぶしたお菓子を口に入れ、かまずに飲み込めるかを試した。咀嚼ができない人に刻み食を提供した場合を再現したもので、単体では飲み込みづらいが、細かくしたゼリーと混ぜると食べやすくなることを体験。大城さんは「食事の工夫で食べられなかったものを食べやすくできる」と強調した。

 2022年に合同会社Comer(コメール)を立ち上げ、食支援のコンサルティングやセミナー開催など幅広く活動する大城さん。「食べることは生きるためにも必要だが、それ以外にも人生を豊かにし家族とのコミュニケーションにもつながる」と語った。

低栄養を予防

 後半は、すこやか薬局に勤務する管理栄養士の佐久川さんが講演。かむ力や飲み込む力に合わせた食形態の工夫と、量を増やさず栄養価を上げる食事で、低栄養を予防する重要さを語った。

 加熱しても柔らかくならない食材や喉に張り付きやすい食材は、使用を減らすことも検討する必要がある一方、調理の工夫で食べやすくなる食材もある。ナッツ類やごま、肉などの硬い食材は形を変え、ごぼうや青菜など繊維が多いものは繊維を切ったり加熱したりすることで食べやすくなる。パンやゆで卵などぱさぱさしたものは、水分を含ませるなど、工夫方法を紹介した。煮込んだり、とろみを付けたりするなど、食形態を工夫した食事は、準備に時間がかかるようになる。準備にかけられる時間や費用は人それぞれだとし、佐久川さんは、手作りの食事と市販品を組み合わせることや配食サービスなどの事例を紹介。「何を選ぶかはその方々の生活によって異なり、どれも間違いではない。管理栄養士にも気軽に相談してほしい」と呼びかけた。

 (吉田早希)