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<ひと>戦争に向かう流れ、リアルに記録 映画「戦雲(いくさふむ)」監督の三上智恵さん


<ひと>戦争に向かう流れ、リアルに記録 映画「戦雲(いくさふむ)」監督の三上智恵さん ミサイル配備が進む南西諸島の現状を追う映画「戦雲(いくさふむ)」を監督した三上智恵さん
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 日本最西端の与那国島に陸上自衛隊駐屯地が開設されたのは2016年。23年までに南西諸島の奄美大島、宮古島、石垣島で駐屯地が新設されてきた。戦車やミサイル部隊が配備され、弾薬庫が増設された。

 「国はこの数年、有事の際は沖縄から九州を戦場にする作戦を隠すこともしなくなった。それなのに多くの人の認識が追い付いていない」

 ドキュメンタリー映画「戦雲(いくさふむ)」は、多くの映画賞を受賞した「沖縄スパイ戦史」以来、6年ぶりの監督作。戦争に向かう流れが加速する現状をリアルに伝える作品だ。

 毎日放送を経て、1995年、沖縄に移住。琉球朝日放送のニュースキャスターを務め、2014年フリーに転身した。

 「報道の能力が低下していく中で、正確な情報を伝えられるのはドキュメンタリーしかないと思った」。だが、状況は悪化するばかりで「映画は結局、人を変えることはできない」と絶望。しばらくは作品を作れなかった。「でも、たくさんの人の手が、背中を押してくれました」

 昨年実施した45分のスピンオフ版上映会は全国1300カ所で開かれ、新作を待望する声がカンパと共に寄せられた。

 映画に出てくる石垣島在住の山里節子さんに「祈りだけでは変えられないけど、祈りなしには平和をつかめない」と言われたことがある。「その意味が今、体の芯で分かった。どんなに追い詰められても、歌と祈りは残る。そんな人間賛歌の映画が撮れたと思います」。東京都出身、59歳。

(共同通信)