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社会的偏見も課題、地域で支援を 介護・福祉関係者対象 那覇でHIV/AIDSセミナー コントロール可能な慢性疾患


社会的偏見も課題、地域で支援を 介護・福祉関係者対象 那覇でHIV/AIDSセミナー コントロール可能な慢性疾患 HIVに関する知識や県内の現状などを説明する「HIV/AIDSセミナー」=2月22日、那覇市
この記事を書いた人 Avatar photo 吉田 早希

 介護・福祉関係者を対象にした「HIV/AIDSセミナー」が2月22日、那覇市立識名小の敷地内にある地域連携室(クラブハウス)で開かれた。那覇市地域包括支援センター繁多川が主催し、琉球大学病院第一内科・県感染症診療ネットワークコーディネーターの新里尚美さんが、HIVやエイズに関する知識、県内の現状などについて解説した。

講師を務めた県感染症診療ネットワークコーディネーターの新里尚美さん

 エイズは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染し、潜伏期間を経て発症する。冒頭で新里さんは「HIVはウイルスの名称で、エイズは病気の名前」とし、HIVの感染経路は性的接触による感染、母子感染、血液感染があると説明した。日本では性的接触による感染が最も多いとされている。また、エイズ発症後にHIVに感染したことが判明する「いきなりエイズ」の割合は、全国では毎年30%程度で推移するが、県内は昨年42・9%と全国値より高い傾向にあると指摘した。

治療は3病院で

 県内でエイズを診療・治療するのは中核拠点病院の琉球大学病院と、拠点病院の県立南部医療センター・こども医療センター、県立中部病院の3カ所。HIV治療は、適切な内服を継続していれば、非HIV患者とほとんど変わらないライフサイクルを過ごせるとして、新里さんは「高齢化によりHIV以外の疾患にかかったり、ADL(日常生活動作)・認知機能が低下したりすることから、非HIV患者と同じように地域の支援が必要だ」と話した。

 一方、社会ではHIV陽性者に対する偏見が残っていると指摘。「『同性愛者に多い病気でしょ』など社会的な偏見がある。社会から向けられる偏見を当事者自身も感じ、セルフスティグマを抱えてしまっている」と訴えた。

「生きる」支えて

 患者を支援するポイントとして、HIVは治療ができるコントロール可能な慢性疾患であること、長期受診と抗HIV薬の確実な服薬が必要で、治療費が高額であることなどを挙げた。

 新里さんは「拠点病院から紹介している方はウイルス量が検出限界以下で治療が安定した方。今、目の前にいる患者さんの『生きる』を一緒に支えてほしい」と語った。

 (吉田早希)


出前研修活用を

 HIV・エイズの基礎知識や陽性者へのケアについて知ってもらうため、県内医療機関やクリニック、保健所などを対象に今回のような出前研修を実施している。県による事業で受講無料。研修内容は、施設の状況に合わせて調整もできる。問い合わせは県感染症診療ネットワークコーディネーターの新里さん、電話098(895)1144。