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男女の「作られた能力差」、打破へのヒントは ジェンダー平等1位の鳥取元県知事に聞く 6月29日に講座も


男女の「作られた能力差」、打破へのヒントは ジェンダー平等1位の鳥取元県知事に聞く 6月29日に講座も 「男性が家庭内進出をすることで女性の社会進出もまっとうなものになる」と語る片山善博氏=21日午後、オンライン
この記事を書いた人 Avatar photo 嶋岡 すみれ

 6月29日に県男女共同参画センター「てぃるる」で開かれる男女共同参画講座「女(ひと)と男(ひと)とみんなのチカラ~都道府県版ジェンダー・ギャップ指数結果から見る沖縄県のすがた~」で、鳥取県知事や総務大臣を務めた片山善博氏が講師として登壇する。片山氏は5月21日に合同オンラインインタビューに応じ、女性の社会進出と家事育児からの解放の必要性に言及した上で「男性は職場で机にかじりついているのではなく、家庭内進出をしないといけない。それで初めて(男女の)バランスが取れる」と指摘した。

 「地域からジェンダー平等研究会」は3月8日の国際女性デーに合わせて「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」を2022年から毎年公表し、男女平等度を政治、行政、教育、経済の分野で示す。24年、全国で最も男女格差が小さいとして、鳥取は行政と経済の分野で1位だった。沖縄は政治が28位(前年同)、行政が12位(同16位)、教育が8位(同9位)、経済が5位(同1位)だった。

人事体制を是正

 鳥取は行政分野で3年連続1位を維持している。だが片山氏が県庁に出向した約30年前には、男女の「作られた能力差」(同氏)を目の当たりにしたという。男性はさまざまな課に配属され、多様な経験を積んで管理職に登用されるのに対し、女性の業務は庶務に限られていた。片山氏は「20年たつといろんな能力差が出てくる。だから『課長は男性』となっていた。それは明らかに作られた能力差だった」

 1992年に人事を担当する総務部長に就任した。男女の差ができやすい人事体制を是正するために「男も女も庶務もやるし、庶務以外もやる」という人事方針に変えた。

 男性職員から数々の反発がありながらも改革を進めた。性別に関係なく個人の能力に着目して役職・役割を与え、能力や意欲のある人が存分に力を発揮できる環境を整えていった。知事時代には、それまで男性ばかりが充てられていた秘書に女性を起用した。

 また子育てをしている人でも無理なく働き続けられるように働き方改革も進めた。その結果、常態化していた長時間労働の見直しやデジタル化につながり、男性にとっても働きやすい職場になった。片山氏は鳥取での取り組みを振り返り「無理をしないで男女の機会均等を達成しようと思ったら20年くらいはかかる」と、長期的な視点の必要性を指摘した。

二重苦

 ジェンダー・ギャップ指数によると、沖縄の就業率は男性67・3%、女性54・6%で男女の差が全国で最も小さい。だが「共働き家庭の家事・育児などに使用する時間の男女格差」は31位で、女性が1日当たり278分、男性52分と大きな差がある。

 片山氏は「女性が家事育児の大半を担い、地域との交わりも女性が中心だと、女性にとって二重苦になっている」と指摘した。こうした現状により、女性が妊娠・出産をあきらめたり、仕事を辞めたりせざるをえない状況を招いていると分析した。その解決策として「家庭を男女共同参画にする。そういう社会にしなければ本当の意味で女性の社会進出も、まっとうなものにならない」とした。沖縄は6月16日に県議会議員選挙の投開票を控えている。5月26日時点での立候補予定者72人のうち、女性は11人。現在の県議会議員も48人のうち女性は7人にとどまっている。片山氏は「政治家は一種のサービス業。顧客(住民)は男女半々なのに、全部男が政策決定していると、政策にズレが生じる」と議員が男性に偏っている現状を問題視した。その上で「世の中には老若男女いる。議会も老若男女バランスが取れるような構成が望ましいと思う」と述べた。

 (嶋岡すみれ)

 かたやま・よしひろ 1951年岡山県生まれ。74年東京大法学部卒。自治省(現総務省)に入省後、鳥取県庁や国土庁への出向、府県税課長などを経て99年、鳥取県知事(2期)。退任後、地方制度調査会副会長を務め、2010~11年総務大臣。慶応大、早稲田大教授などを経て現在は大正大教授。


午後1時半~5時 商品販売、交流会も

講座への参加を呼びかけるおきなわ女性財団の(右から)玉城尚美さん、平美千子さん、垣花昭彦さん=29日、てぃるる

 片山善博氏が登壇する男女共同参画講座「女(ひと)と男(ひと)とみんなのチカラ~都道府県版ジェンダー・ギャップ指数結果から見る沖縄県のすがた~」(主催・おきなわ女性財団、県、県男女共同参画センター管理運営団体)は6月29日午後2時から午後4時、那覇市の県男女共同参画センター「てぃるる」大ホールで開かれる。入場無料。参加申し込みが必要。手話通訳、一時保育もある。

 おきなわ女性財団の玉城尚美さんは「ジェンダー・ギャップ指数から沖縄の課題が見えてくる。鳥取で斬新な取り組みをしてきた片山先生の話は課題解決に向けたヒントになると思う。いろいろな世代や立場の人に来てもらいたい」と参加を呼びかけた。

 また午後1時30分からは南風原高校郷土文化コースの生徒たちによるオープニングイベントも行われる。午後4時~午後5時は県内の女性起業家による商品販売や、活動を紹介する「てぃるる交流会」も開かれる。

 一時保育は生後6カ月以上の未就学児が対象。利用料は1人500円。利用する場合は6月21日の午後4時までに申し込みが必要。問い合わせは電話098(868)3717。