歴史から見る「トートーメー問題」 負担や悩みを継承しないためには…沖縄女性史家・宮城さん講演


歴史から見る「トートーメー問題」 負担や悩みを継承しないためには…沖縄女性史家・宮城さん講演 トートーメーの継承について講演する宮城晴美さん=8日午後、那覇市銘苅のなは市民協働プラザ
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 なは女性センター講座「沖縄女性史から『トートーメー(位牌(いはい))』継承問題を考える」が8日、那覇市銘苅のなは市民協働プラザで開かれた。講師は沖縄女性史家の宮城晴美さんが務め、トートーメーと女性の歴史的な位置づけをひもといた。宮城さんは「(トートーメーにまつわる)負担や悩みを子や孫に継承しない努力をしないといけない」と強調し、「どう継承するかは家族の話し合いが大切だ」と呼びかけた。会場には約50人が足を運び、講演に耳を傾けた。

 トートーメーは15世紀に中国から琉球王家に伝わった。儒教道徳の下、男系の先祖を重んじ、娘を相続から排除する門中制度が士族階級の間で慣習として広まっていく。1898年に家制度(家父長制)を重んじる民法・戸籍法が施行されたことで、慣習だった門中制度の法的な裏付けができ、沖縄独自の文化が形成された。

宮城さんの講演に耳を傾ける参加者ら

 宮城さんはこの文化の特徴として(1)長男を絶対とする相続制(2)二男・三男は分家(3)娘は嫁いで夫に仕え、長男を産まなければならない(4)娘に財産の相続権なし(5)娘婿に継がせない―を挙げた。

 1957年に沖縄に新民法が適用されると、娘も財産を継承できるようになった。だが戦後新たに流布した「たたり」思想によりトートーメーの継承から女性が排除されていく。「たたり」思想は、(1)長男排除(チャッチ ウシクミ・嫡子押し込め)(2)兄弟が祀(まつ)る(チョーデー カサバイ・兄弟重なり)(3)娘に継がせる(イナグ グァンス・女元祖)(4)娘婿に継がせる(タチー マジクイ・他系混交)―の四つのタブーを犯すと、家族や親族に病気や事故などの「たたり」があるとするもの。

 そうした中、75年に国連が国際婦人年を宣言。女性の地位向上を求めて国内外で機運が高まる中、沖縄でも女性が位牌継承権を求めて提訴するなど「タブー」を打ち破る動きが起こった。

 現在は永代供養など新たな形で先祖を供養する人も増えてきている。一方で、宮城さんはトートーメーや財産の継承を長男にこだわったり、地域や家庭の行事は嫁の役割としたりする「伝統」も根強く残っていると指摘。「家庭の中で誰かが困るのは『伝統』としてどうなのか」と疑問を呈した。

 また長男であるために進学や就職で県外に出してもらえなかったり、結婚すると男児の出産が要求されたりする問題があることにも触れ「子どもの生き方は多様化している。結婚するとも、子どもが生まれるとも限らない。(継承については)子どもの意見をちゃんと聞いてあげる必要がある。話し合いでしか解決できない」と訴えた。

 (嶋岡すみれ)