〈ドクターのゆんたくひんたく〉192 脳卒中と生活動作 リハビリ継続し定着促す


〈ドクターのゆんたくひんたく〉192 脳卒中と生活動作 リハビリ継続し定着促す
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 「日常生活動作」をご存知でしょうか? 日常生活動作とは、食事、身だしなみ(洗顔、着替え、入浴等)、トイレ(下着を下げる、座る、拭き取る等)、歩行等の生活に欠かせない、身の回りの動作のことです。

 脳卒中は突然発症し、急性期病院での治療やリハビリテーション(以下リハビリ)が開始されます。その症状や回復は損傷された脳の場所や大きさによって異なります。

 症状は、意識が悪い(意識障害)、手足が動かしにくい(麻痺(まひ)、失調、筋緊張等の運動障害、痺れ等の感覚障害)、飲み込みにくい(嚥下(えんげ)障害)、ろれつが回りにくい、言葉が出しにくい等(構音障害、失語症)、注意が散漫、認知や記憶が曖昧、空間を見落とす等(高次脳機能障害)、日常生活動作の難しさ等とさまざまあります。

 急性期病院での治療やリハビリ後も日常生活動作が難しい場合、回復期リハビリ病棟に転院してリハビリを続けたり、退院後に介護保険等のリハビリを続けたりすることもあります。

 回復期リハビリ病棟は医師、看護師、リハビリ専門職、介護士、栄養士、社会福祉士等の多職種で集中的なリハビリを行い、患者さまと共に在宅復帰を目指す病棟です。そこでの脳卒中のリハビリは(1)動きにくさに対し、姿勢を整え、介助または声かけなどで繰り返し動作を行う「動作への機能訓練」(2)言葉や高次脳機能障害に対し、過度な疲労に注意しながら紙面や物品を用いて行う「思考への機能訓練」(3)日常生活動作の「動作訓練」―のバランスを取って行います。

 訓練は「できる動作」と「できない動作」を患者さまと共有して行います。できない動作は、装具やつえ、車いす等の使用、麻痺のない手足の活用、メモを取る、動きやすい環境に整える等の工夫を考えます。リハビリで訓練した動作は、病棟生活でも活用し、見守りや声かけ、介助を行いながら動作の定着を促します。

 リハビリは地道なものですが、自分なりのやり方、ペースを見つけ、続けていきましょう。日常生活動作が安定すると、生活に広がりや豊かさが出てきますよ。

 (浅見晴美、豊見城中央病院 リハビリテーション科)