職場でヒールのある靴の着用を強制する社会に異議を唱えた「#KuToo(クートゥー)」運動で知られる、俳優の石川優実さん(37)による公開講座「知っていますか? 『#KuToo運動』~気づきから考えよう 未来は変わる~」が10月26日、那覇市の県男女共同参画センターてぃるるで開かれた。石川さんは運動の経緯や成果を振り返り「声を上げ、一人一人が少しずつ行動することで(社会に)届くと知ることができた。私たちは微力だけど無力ではない」と力強く語った。
石川さんは2019年、葬儀場でアルバイトをしていた時に女性だけが5~7センチのヒールのある靴の着用を義務づけられていることに違和感を抱き、SNSに投稿した。ヒールのある靴は足を痛めやすく、動きづらい。「なんで男性と同じ仕事をしているのに、女性だけヒールを履けって言われるんだろう」―。
この投稿に多くの共感の声が寄せられたことから、「靴」と「苦痛」、性暴力被害を告発する世界的な運動「#MeToo(私も)」を掛け合わせた「#KuToo」運動を開始した。
職場でヒールやパンプスの強制を禁止するように厚生労働省から事業主へ通達を出してもらうことを目的とした署名活動を始め、23年3月までに約3万3千筆が集まった。
運動は国会でも取り上げられ、航空会社や携帯会社のヒール着用規定が撤廃されるなどした。また英BBC放送が選ぶ19年の「今年の100人の女性」にも選出されるなど、世界的にも大きな注目を浴びた。
一方で、石川さんはSNS上で激しいバッシングにさらされた。「女性運動にはバッシングがつきもの」とし、寄せられたバッシングの数々を紹介した。
女性を批判する時には「気が強い」「ヒステリー」「でしゃばり」といった言葉が使われたり、容姿や年齢に言及されたりする場合が多いことを問題視した。「男性のことを『気が強い』とは批判しない。バッシングする側にあるジェンダーバイアス(性別に基づく固定観念)も感じた」と指摘した。
また今の社会に違和感や疑問を抱き、何かアクションを起こしたいと考えている人に向けて、自身が行動を起こすようになった4段階を紹介。(1)やりたくないことをやめる(2)できない自分を責めない(3)人のやることの邪魔をしない(4)ルールや常識を自分で作らない―を上げた。
石川さんは「運動は人に強制されるものではない。『こういう社会になってもらいたい』と思ってやるものだ。誰のためでもなく、自分の幸せのために必要であれば運動をしてほしい」と強調した。その上で「自分の幸せや感情は他人ではなく自分で決めてほしい」と呼びかけた。
公開講座は職場や家庭、地域のあらゆる場で活躍できる女性を育成する講座「てぃるる塾」の一環で、県とおきなわ女性財団が主催した。
(嶋岡すみれ)