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「不条理と闘い続けて」国連スピーチ経験者らが玉城知事にエール 「基地の島」変革の契機に 沖縄


「不条理と闘い続けて」国連スピーチ経験者らが玉城知事にエール 「基地の島」変革の契機に 沖縄 国連人権理事会の国際秩序に関する会合で、米軍基地の集中による人権侵害についてスピーチする玉城デニー知事=18日午後5時42分(日本時間19日午前0時42分)、スイス・ジュネーブの国連欧州本部
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 玉城デニー知事が日本時間19日未明に国連人権理事会で演説し、米軍基地の集中している沖縄の現状を注視するよう国際社会に呼び掛けた。沖縄における諸問題の解決を国連で訴えてきた団体の関係者からは、知事の発言内容に好意的な意見が相次ぎ、演説を通じ改善の糸口につながることを期待した。

 琉球民族独立総合研究学会共同代表で、4月に米国の国連本部で沖縄の自己決定権侵害の現状を報告した友知政樹沖縄国際大教授。「沖縄の知事として、基地によるさまざまな問題を世界に発信したことは意義がある」と評価した。

 友知さんは「安保条約が憲法の上にあり、司法が機能せず人権が侵されている。国際社会にこうした問題を発信することは必要不可欠」と語る。国連で採択された「平和への権利宣言」を演説に取り入れている点を評価するも、「国際人権規約などにも言及してほしかった」と注文も付けた。

 一方、国連で日本政府側の代表は沖縄の負担軽減のために新基地建設が必要だと強調した。19日は新基地建設に絡む沖縄防衛局による工事の設計変更申請について、国が県に承認するよう勧告する文書を出したことも明らかになった。「知事はこうした脅迫行為に屈せず、不条理や暴力と闘ってほしい」とエールを送った。

 保革を超えた取り組みを目指し7月に発足した「沖縄を再び戦場にさせない県民の会」の山城博治事務局長も、「沖縄の窮状を国連で訴えることは大変な意義がある」と知事の行動をたたえた。

 山城さん自身も2017年に人権理事会で発言し、基地問題に対する抗議活動への弾圧を訴えた。「国連担当者から『沖縄の現状やあなたのやろうとしていることについて、人権理事会はしっかり見ている』と言われ、大変励まされた」と振り返る。「すぐに何かが変わるとは思わないが、何かが変わるきっかけにはなるはずだ」と、力を込めて語った。

 米軍基地からの有機フッ素化合物(PFAS)の問題を追及する市民団体「宜野湾ちゅら水会」の町田直美さんは、会のメンバーらと知事の演説をオンライン中継で見守った。「まずは一歩。でも大きな一歩だと思う」と感想を語った。

 町田さんは7月にスイス・ジュネーブで開かれた国連会合に出席し、沖縄のPFAS汚染について報告、基地への立ち入り調査ができない問題点を訴えた。

 玉城知事は有害物質や廃棄物など環境に関する会合にも出席する。「国際社会の目は侮れない。国連による調査団の沖縄入りが実現してほしい」と期待した。
 (小波津智也、慶田城七瀬、玉寄光太)