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「金武湾を守る会」 結成50年で闘争史 自然守る闘いの歴史を後世へ 市民運動の原点


「金武湾を守る会」 結成50年で闘争史 自然守る闘いの歴史を後世へ 市民運動の原点 「金武湾を守る会」の闘争史の発刊を報告する池宮城紀夫弁護士(右)とゆい出版の松田米雄さん=9月28日、那覇市泉崎の琉球新報社
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

与那城村(現うるま市)の平安座島と宮城島周辺の海を埋め立てて石油備蓄基地(CTS)を建設する計画に反対するために地元住民らで結成した「金武湾を守る会」が、9月22日で結成50年となった。自然を守る闘いの歴史を後世に伝えようと、関係者らが記録や資料をまとめ、同日に闘争史を発刊した。タイトルは「海と大地と共同の力―反CTS金武湾闘争史」(金武湾闘争史編集刊行委員会編、ゆい出版)。関係者は、民意を無視し国が強行する辺野古新基地建設などを例に挙げ「書籍から学んでほしい」と訴えている。

1972年10月、CTS建設のために平安座―宮城島間の海域212ヘクタールの埋め立て工事が始まった。沿岸部に住む住民からは環境への影響を懸念する声が高まり、CTS建設を阻止し自然を守ろうと翌73年9月22日に地域住民を中心に「金武湾を守る会」を結成した。

埋め立てを認めた当時の屋良朝苗知事に対し公開質問状の提出や県庁内での座り込みなどの行動を展開。2度にわたり裁判で争うなど自然環境を守る運動を実践した。CTSの建設阻止はかなわなかったものの、沖縄では初とみられる反公害闘争を住民たちが政党など組織に頼らず自立して取り組んだことなどが評価されている。

「守る会」の顧問を務めていた池宮城紀夫弁護士は「金武湾闘争は復帰後の自然環境を守るという市民運動の原点だ」と主張する。「この運動が教訓となり、石垣市白保の海を埋め立てる新石垣空港建設の阻止につながった。自然を守るということは基地撤去運動にもつながっていく。(東村)高江でのヘリパッド建設反対や、現在の辺野古新基地建設反対運動にも引き継がれている」
こうした沖縄における市民運動の分岐点といえる闘争の軌跡を記録し後世に引き継ごうと、2005年に編集作業に着手。刊行までに18年の歳月を費やした。

書籍はB5版全382ページ。闘争の概要や関係者による座談会や回顧などを収録するほか、機関誌や新聞集成など1440ページ分を収めた付録CDも添付する。限定700部で価格は9900円。ジュンク堂書店那覇店など県内書店で順次販売される予定。

池宮城さんは、辺野古新基地建設断念を国に迫る住民運動について「粘り強く闘い続けない限り展望は開かないのではないか」と述べ、そのためにも県民が一丸となった取り組みを求める。「若者も運動の中心に入ってもらうことができれば、沖縄の現状はもっと変わると思う。若者が自分事として将来を考えられる環境を、われわれはつくる責任がある。そのためにも金武湾闘争の歴史を残す意義がある。ぜひ多くの人に読んでほしい」と呼びかけた。書籍の問い合わせは電話、070(6590)0507。

(小波津智也)