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【識者談話】ケナガネズミ、食料求め人里に現れる可能性も 小高信彦氏(森林総研九州支所主任研究員)


【識者談話】ケナガネズミ、食料求め人里に現れる可能性も 小高信彦氏(森林総研九州支所主任研究員)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【北部】絶滅が危惧されている国指定天然記念物ケナガネズミの年間交通事故件数が11月20日時点の速報値で43件に上り、環境省やんばる自然保護官事務所が統計を取り始めた2005年以降、最多となった。これまで22年の41件が最多だった。同事務所は要因について食料のイタジイが一昨年、昨年と豊作だったことや、外来種のマングースの防除が進んだことで生息状況が回復し、ケナガネズミが道路近くなどで活動する機会があることを可能性として挙げている。同事務所が28日に速報値を公表した。

 ケナガネズミの生態や個体数の増減については未解明のことが多いが、昭和期に伐採が進んだやんばるの森が伐採量の減少で回復しつつあることや侵略的外来種であるマングースの減少でケナガネズミの個体数は回復傾向にあると考えている。

 その状況下で秋冬の繁殖期の重要な食料であるイタジイが一昨年、昨年と豊作だった。冬季の餌が豊かであれば、ケナガネズミの繁殖成功率は高くなり、冬の餌不足で死ぬことも少なくなる。森林回復とマングースの減少という長期的な要因に、ドングリの豊作という短期的な要因が重なったことでケナガネズミの個体数が大幅に増加し、過去にない事故件数になったのではないか。

 速報段階になるが、今秋のドングリは凶作傾向のため、冬に子どもがたくさん生まれて増えることはあまりないと考えられる。一方で餌を求めて分布域を広げるケナガネズミが人里近くに現れることも考えられる。事故の多い県道2号だけでなく、これまで事故が少なかった東村や国道58号などで事故が起こる可能性もある。

 ケナガネズミは地上を移動するのがあまり得意ではなく、ゆっくり動く。より注意して運転することで事前に発見してよけることもできる。
 (保全生態学)