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天然記念物のケナガネズミ、交通事故43件 23年11月時点で過去最多に 生息状況の回復が関係か


天然記念物のケナガネズミ、交通事故43件 23年11月時点で過去最多に 生息状況の回復が関係か 夜、路上に出ているケナガネズミ(環境省やんばる自然保護官事務所提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 武井 悠

 【北部】絶滅が危惧されている国指定天然記念物ケナガネズミの年間交通事故件数が11月20日時点の速報値で43件に上り、環境省やんばる自然保護官事務所が統計を取り始めた2005年以降、最多となった。これまで22年の41件が最多だった。同事務所は要因について食料のイタジイが一昨年、昨年と豊作だったことや、外来種のマングースの防除が進んだことで生息状況が回復し、ケナガネズミが道路近くなどで活動する機会があることを可能性として挙げている。同事務所が28日に速報値を公表した。

 国や県などの関係団体は今年から、統計でロードキルが多かった1カ月間について「STOP!ロードキル月間」に定め、事故防止の啓発活動に取り組んできた。一方でケナガネズミの事故は今年4月末に18件と、過去最悪だった前年同月を上回るペースで増え、6月には11件発生した。野生復帰できたのは現時点で43件中1件だけだ。

 夜間の事故が多いことを受け、国や県など関係団体は反射板を活用した注意喚起の看板を県道2号や同70号に設置してきた。

 環境省は今後、関係機関でつくる連絡会議を活用し、より効果的な対策を検討する考えだ。

 同事務所の椎野風香自然保護官は「ケナガネズミはこれから子育てシーズンに入り活発に動く。昨年は12月に9件発生しており、やんばるを夜走る際はケナガネズミが出てくるかもしれないという認識で運転してほしい」と安全運転を求めた。

 22年の交通事故件数は速報値で37件だったが、回収した死骸の死因を分析した結果、確定値は4件増の41件となった。

 (武井悠)