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【現地ルポ】「米軍機、なぜここに」屋久島住民に衝撃 馬毛島基地整備に不安も オスプレイ墜落


【現地ルポ】「米軍機、なぜここに」屋久島住民に衝撃 馬毛島基地整備に不安も オスプレイ墜落 屋久島空港に運ばれてきた救助活動に使用するとみられる機材を整理する米軍関係者ら=30日午前11時すぎ、鹿児島県屋久島
この記事を書いた人 Avatar photo 大嶺 雅俊

 鹿児島県屋久島で11月29日に発生した、米空軍横田基地に所属するCV22オスプレイの墜落事故。島の静けさを破るように起こった国内初のオスプレイの死亡事故に、住民らの衝撃は収まらず、国が軍備増強を進める「南西シフト」の影響を懸念する声も挙がった。沖縄でも改めて不安が渦巻く中で、米軍は飛行訓練を強行。県民は不条理な民意無視に憤りの声をぶつけ、即刻飛行を中止するよう訴えた。

 「世界自然遺産の島」として名高い鹿児島県屋久島。海岸沿いを走る鹿児島県道77号から島の中央部に目をやると、緑深い山々がそびえる。この島の東部の沖合1キロに米空軍横田基地所属のCV22オスプレイが墜落した。自衛隊や海上保安庁などによる乗員7人の捜索は夜通し続き、一夜明けた30日も地元漁業者が捜索に協力する。「何とか見つかってほしい」との思いを島民が共有する一方、日頃は目にする機会がほとんどない米軍機による事故が発生した衝撃も広がる。同県馬毛(まげ)島での自衛隊施設整備も重なり、今後への不安を募らせる声もある。

 30日午前、屋久島空港に降り立った飛行機から団体観光客が降りてきた。「観光シーズンほどではないが、まだお客さんは来るよ」と、乗車客待ちしていたタクシー運転手の男性=70代=は話す。オスプレイ墜落はニュースで知ったという。「米軍機なんてほとんど飛ばないのに、なんでこんなところにと驚いた」

屋久島町からの要請を受けて行方不明者らの捜索のため出港する漁船
=30日午前11時前、鹿児島県屋久島の安房港

 米軍機訓練移転を伴う自衛隊基地整備が進む馬毛島(同県西之表(にしのおもて)市)は屋久島から北東に約40キロの距離にある。「どうせオスプレイとかも飛ぶようになるんじゃないか。そう考えると(今回の墜落は)怖いよね」。苦笑いを浮かべたのは、不安を隠すためだろうか。

 屋久島漁協は30日午前に捜索の協力要請を受け、9隻の船が安房(あんぼう)港を出港。乗員は発見されなかったが、海上で回収された機体の一部とみられる部品などが港の倉庫の前に集められた。ガソリンスタンドでかぐような臭いが鼻をつく。回転翼のような物など、ばらばらになった機体が事故の衝撃の大きさを物語る。搭乗員の持ち物とみられるバッグもある。確かに人が乗っていた証拠だ。

 捜索に当たった漁師の林岳信さん(48)は「(オスプレイの搭乗員が)生きているチャンスはある。何とか見つかれば」との思いで、潮が速く風も強い中、船を走らせたという。ただ米軍機の姿をあまり見ない環境にあることもあって、今回の事故に「無関係な話だと思っていた」と吐露する。「たまたま屋久島の近くで、ということだとは思う」としつつ、馬毛島での基地整備が頭をよぎる。「こういうことがしょっちゅうあると嫌だな」。表情が曇った。

 島の名産シマアジは12月に盛漁期を迎える。屋久島漁協組合長の羽生(はぶ)隆行さん(72)は、捜索に協力しながらも、漁に支障が出ないか気をもむ。この日、屋久島を訪れた松本尚防衛政務官には、事態の早期解決を求めた。近海では中国船の領海侵入も相次いでいるという。「それもあるのに、オスプレイの墜落とは」とため息をついた。

(大嶺雅俊)