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不条理にひるまず 辺野古 県上告 知事「民意こそ公益」 鋭い口調、表情険しく


不条理にひるまず 辺野古 県上告 知事「民意こそ公益」 鋭い口調、表情険しく 公務復帰のため登庁する玉城デニー知事(中央)=27日午後0時47分、県庁(大城直也撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡る代執行訴訟。福岡高裁那覇支部が軟弱地盤改良工事の設計変更申請の承認を命じた判決に、県は承認せず27日、最高裁に上告した。玉城デニー知事は地方自治の根幹ともいえる民意に基づくと強調。28日にも代執行に踏み切る国の暴挙に憤りが広がる。上告は工事をすぐに止める手だてにならないものの、市民らは不条理にひるまず抗議を続ける意志を固めた。 (1面に関連)
 政府による史上初の代執行が間近に迫る中、最高裁への上告を表明した玉城デニー知事。会見では冷静な面持ちで「多くの県民の願いをしっかり訴えていきたい」と語った。一方、国の請求を全面的に認めた20日の福岡高裁に対しては強い口調で不満を見せる場面も。高裁が認めた公益侵害について「多くの県民の民意という真の公益を顧みなかったことは、司法自ら『辺野古が唯一』との固定概念に陥ったものと言わざるを得ない」と痛烈に批判した。
 肺炎のため、7日ぶりに公の場に現れた玉城知事。会見室に現れると、報道陣のカメラのフラッシュが一斉にたかれた。午後5時に始まった会見では、時折、原稿に目を落としながらも強い口調で、辺野古新基地建設阻止が「県民の願い」であり「思い」であると繰り返し語り、民意が玉城県政の「後ろ盾」になっていると訴えた。
 最高裁での勝算を問われ、「県民の願いを受け止めていただき、県が何を訴えているのかということについて真摯(しんし)に検討いただけるものと期待している」と語った。
 辺野古新基地建設を巡り2014年12月の翁長県政誕生から政府と県の対立が続く。会見で歴代知事が繰り返してきた、国土の0・6%の土地に米軍専用施設の70%が集中している不条理にも触れた。「(政府が)米国にしっかり要求することができれば沖縄における基地問題は目に見える形で前進していただろうと思わざるを得ない」と語った。
 代執行により、大浦湾側の軟弱地盤改良工事は年明けにも始まるとみられる。玉城知事は「疑義が呈されている難工事だ」と実現性を疑問視し、一日も早い普天間飛行場の危険性除去に向けて「対話による解決」を改めて訴えた。 (吉田健一)