7日に本部町のもとぶ文化交流センターで行われた二十歳の集いに、仲宗根卓希(いつき)さん(20)は親友の遺影を抱えて参加した。
写真に写るのは2021年10月に18歳で亡くなった渡久地音和(とわ)さん。仲宗根さんは「一緒に成人を迎えられた気がした。大人に仲間入りし、これからも音和の分も必死に頑張りたい」と人生の節目に誓った。
音和さんは体を動かすことが好きで、笑顔が絶えなかった。中学1年からテニスを始め、県外の大会に県代表として出場したこともある。仲宗根さんは「家の中でボール遊びをしたり、一緒に買い物に行ったりした」と懐かしむ。
音和さんは20年3月に急性骨髄性白血病を発症して入院した。「みんなと一緒に卒業したい」という強い思いがあり、自らの希望で院内学級のある病院に転院した。転院先は新型コロナ禍で家族との面会ができなかったが、家族は音和さんの熱い思いを応援することを決めた。
9月に骨髄移植手術が成功し、21年4月から本部高に復学した。一部の授業を同級生と一緒に受け、グラウンドで体を動かしていたが、1カ月ほどで再び体調が悪化して入院した。仲宗根さんは「顔が腫れ、病気と闘っていた」と振り返る。
再び入院した音和さんは食事も取れないほど落ち込んだが、母の千夏さん(52)が持ち込んだアイスを口にすると「やっぱり頑張る」と前を向いたという。しかし「一緒に卒業」という願いは届かず、音和さんは卒業前に他界した。同級生たちは手作りの卒業証書を卒業式で千夏さんに送った。
二十歳の集いを前に、音和さんの父、政道さん(61)は「完治して成人式を迎えさせたかった」と目頭を押さえる。千夏さんは「音和はみんなの気持ちと一緒にいて、ずっとみんなを見守り続けている」と言葉を詰まらせた。
式典では「音和さんを救う会」が集めた寄付金を活用し、オリジナルステッカーとボールペンの記念品が配られた。音和さんの家族もメッセージを寄せ「音和もみんなの久しぶりの姿や晴れ姿に喜んでいると思う。これからの人生も精いっぱい楽しんでね」と願った。
(武井悠)