沖縄の戦後史から現在の基地問題までを県内の識者や住民など約50人の証言で明らかにしたドキュメンタリー映画「沖縄狂想曲」の上映が17日から、那覇市の桜坂劇場で始まる。監督の太田隆文さん(62)は「厳しい現実の中で生きている沖縄の人たちの言葉は重い。沖縄を知ることは日本を知ることにもつながる」と意義を語った。
テレビドラマや原発問題を描いた映画「朝日のあたる家」を手がけた太田さんが沖縄の映画を制作したのは2020年上映の「ドキュメンタリー沖縄戦」からだ。「沖縄戦がどういう戦争だったのか知りたい」。その一心で、つてがない沖縄で証言者探しから始め、3年がかりで30人近くの証言を取材した。22年には、白梅学徒隊の体験者の取材から「乙女たちの沖縄戦」を制作し上映した。
今回の映画は「戦争が終わってもなぜ沖縄に基地があるのか」というシンプルな問いが制作の発端になった。背景を探るため、コザ騒動などから辺野古新基地問題に至るまで、県内の識者や住民、鳩山由紀夫元首相などを取材した。「証言を集めることで戦後の沖縄が見えてきた」
映画は県外20館以上で上映する。作中では、沖縄の実情を知らない本土の人たちが沖縄のイメージについて語る声もあえて交える。「本土の人が映画を見ていてそこに(映画を見る前の)“自分”を見つけるとひとごとではなくなるはず」と、意図を語る。「沖縄戦を知らない世代、沖縄を知らないからこそ、一から学んで伝えることができるのかもしれない」と太田さん。「沖縄には未来や希望があることも伝えたい」と来場を呼びかけた。
17日午後1時の上映回後、太田監督の舞台あいさつがある。
(田吹遥子)