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沖縄映画祭から吉本離脱…「エンタメの島」アピールで影響力 一方で「多い時は6億円」の“赤字体質”も  


沖縄映画祭から吉本離脱…「エンタメの島」アピールで影響力 一方で「多い時は6億円」の“赤字体質”も   国際通りで行われた「沖縄国際映画祭」のレッドカーペット=2023年4月16日
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 沖縄国際映画祭は2009年の開始以来、地元住民が制作に参加する「地域発信型映画」や著名俳優・監督らの来県などを通して、県内の映画文化発展や地域活性化に貢献してきた。

 映画祭の中心を担ってきた吉本興業が4日、今年を最後に実行委員会を抜けると表明したことを受け、ほかの実行委員からは「残念だがこれまでの開催に感謝したい」との声が聞かれた。一方で映画祭は赤字体質が指摘されてきた。吉本抜きでの継続は困難視され、代替イベントを模索する動きも出ている。

 「映画祭を通して、日本国内において沖縄がエンタメの島だということが認知されたと思う。間接的に観光に対するイメージに与えた影響力は大きく、大きな価値がある」。4日の実行委員会臨時総会後、実行委副会長の知念覚那覇市長は取材にこう語り、映画祭を評価した。那覇市は毎年、国際通りで行われるレッドカーペットにソフト交付金を活用して1千万円を補助し、運営に協力してきた。

 立ち上げ当初から映画祭の運営を主導してきたのが、吉本前会長の大崎洋氏だ。「沖縄をエンタメ産業の島にしたい」と公言し、映画祭だけでなく、18年には人材育成のため沖縄ラフ&ピース専門学校も開校した。一方、昨年の取材時には映画祭について「一番多い時で6億円くらい赤字があった」と明かし「何とか(収支を)とんとんにして、100年継続できたら」とも話していた。

 吉本以外で実行委に名を連ねるのは那覇市や宜野湾市などの行政や沖縄観光コンベンションビューロー、県内マスコミ各社など。エンタメ業界に影響力がある吉本が抜ける来年以降、映画祭の開催は困難とみられる。

 大崎氏は一般社団法人を立ち上げ、代わりのイベントなどを模索する考えという。ある関係者は「今後はより付加価値をつけたコンテンツ創出が求められるだろう」と指摘する。知念市長は「人口減少を迎える中で、沖縄の地理的優位性を生かしながら、アジアをターゲットにエンタメを広げていくような仕組みができるか。ここは今後のキーワードになる」と語った。

(伊佐尚記、吉田健一)