暴力、貧困、若年出産…沖縄の痛み描き「その先を考える」 映画「遠いところ」先行公開 


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映画「遠いところ」のPRで来社した(左から)工藤将亮監督、花瀬琴音、石田夢実、佐久間祥朗=琉球新報社

 沖縄市コザを舞台に幼い息子がいる主人公の17歳少女が、暴力や貧困など過酷な現実に直面する姿を描いた映画『遠いところ』(工藤将亮監督・脚本)の先行公開が9日、スターシアターズ系で始まった。映画は工藤監督が2019年から沖縄で取材を重ねて脚本をまとめ、全編沖縄で撮影した。工藤監督は「沖縄の現状は日本全国の現状でもあるが、特に先鋭化しているのが沖縄だと思った。映画を見て知ってもらいたい」と語る。

 映画撮影前の1カ月間、出演者はコザで過ごし、若くして子どもを生んで夜の世界で働く少女らへの取材などを演技に反映した。工藤監督は「正解や間違いを提示せずに、自分たちの表現で模索しながら作ることを意識した」と撮影を振り返った。

 映画では、主人公アオイが夫のマサヤからの暴力にさらされるなど、リアルな描写が続く。工藤監督は「痛みを描くことで、彼女たちの心の叫びが見えてくる。ありのままの沖縄、リアルな沖縄を描くことを目指したわけではなく、その先はどうあるべきかを考えて作った」と語った。

映画「遠いところ」の一場面(©2022「遠いところ」フィルムパートナーズ)

 今年4月の第15回沖縄国際映画祭でも特別招待作品として上映された。アオイ役を演じた花瀬琴音は「沖縄の皆さんに見てもらえるのは楽しみにしていた半面、少し不安もあった。でも自分事、身近なこととして感じたと言ってくださる方がたくさんいた。沖縄で多くの方に力を貸してもらい、完成した作品でそう言ってもらえたことがうれしかった」と話した。

 アオイの友人役・海音(みお)を演じた石田夢実は「小さな変化でも気づいてくれる友達や家族の存在が、近くにいることを知ってもらいたい。何より自分を大切に生きてと、作品を通じて感じてもらいたい」と語った。

 マサヤを演じた佐久間祥朗は「鑑賞後にどう考え、日々消化するかは人それぞれだ。沖縄が舞台の作品なので特に沖縄の方に見てほしい」と話した。

 映画は9日からシネマQ、ミハマ7プレックス、シネマプラザハウスで公開する。

(田中芳)